2019 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of public education theory through educational administrative analysis of basic education and Literacies for youth and adults.
Project/Area Number |
19K23333
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横関 理恵 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 特任助教 (30847942)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 公教育論 / 教育行政 / 基礎教育保障 / 夜間中学 / ノンフォーマル教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の1年目にあたる2019年度は、研究計画の通り、主に以下の4点に重点化し研究を進めた。 (1)1960年代から1970年代の大阪府を対象として公立夜間中学の設立とその運営に関する資料を収集、整理、分析した。1966年に行政管理庁によって夜間中学廃止が勧告されるが、1969年に大阪市内に夜間中学が1校新設され、その後、大阪府内に夜間中学が複数校増設される。その経緯を解明するために、夜間中学の元教員の協力を得て、大阪市立天王寺夜間中学の学校保存資料調査を実施し、大阪の夜間中学に関する新聞記事、在日韓国・朝鮮人教育等に関する貴重な資料を収集し得た。大阪での夜間中学増設運動には、夜間中学卒業生が尽力したことがルポルタージュ等で明らかにされているが、新出資料からは大阪教職員組合の関与が窺える資料を入手することができ、夜間中学増設運動の新たな側面を描き出せる可能性が得られた。 (2)大阪府議会図書室を訪れ、大阪府及び大阪市下に夜間中学が開設される際、教育行政側の資料を収集した。1960年代末から1970年代までの大阪府議会会議録を収集し得た。大阪市議会の資料は、大阪市会ホームぺージより大阪市会会議録検索システムを用いて収集することができ、夜間中学開設に至るまでの府議会・市議会での議論の内実を整理・分析し、教育行政側の夜間中学に関する認識がいかなるものだったのかについて考察し得た。 (3)大阪市の夜間中学で在日韓国朝鮮人教育にご尽力された元教員と「大阪の夜間中学を育てる会」の創設期に関わった夜間中学卒業生へのインタビュー調査を実施し、資料からは窺いしれない夜間中学運営の実態に関する証言を得ることができた。 (4)若者・成人の教育機会の保障について理論的・実証的に分析する枠組みを構築するために、教育学・社会学等の関連書籍を入手し、理論枠組みや分析の方法について理解を深めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画より進展した点は、①1960年代から1970年代頃の大阪府・大阪市の夜間中学の開設過程を解明するために、府議会録及び市議会録を入手し得たことである。当時の教育行政側の学齢超過者、在日韓国朝鮮人への教育保障に向けて教育条件整備についていかなる議論を経ていたのか等、夜間中学の開設に至るまでの経緯を詳細に検討することが可能となり、教育行政側の視点から夜間中学開設に至るまでの内実を明らかにしたこと、②複数の研究者より有益な助言を得ることができ、①で行った研究の成果を論文にまとめる準備が進んだことである。 一方、当初の研究計画よりやや遅れた点は、公立の大阪の夜間中学の開設経緯とその運営に関する研究に重点化したため、それ以外の地域の公立夜間中学及び自主夜間中学に関する資料調査・インタビュー調査には至らなかったことである。この点は次年度の課題として引き継がれる。以上、全体としては、本研究は概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、下記の4つの計画を推進する。 (1)学校教育法制度や教育政策が、若者・成人の基礎教育保障問題の発生とその展 開にどのような影響を与えたのかを分析する理論的枠組みを構築するため、関連文献・書籍により理解を深める。(2)1970年代以降の公立の夜間中学(関東地区)に焦点を当て、主に、引揚帰国者、新渡日外国人への教育保障を担う学校運営とその教育実践(日本語教育)に関する資料を収集し整理した上で、資料の分析を行い、その内実を実証的に明らかにすることを試みる。(3)自主夜間中学については、主に、北海道にある夜間中学(札幌、釧路、旭川、函館4校)を対象として訪問調査を行い、開設に至る歴史的経緯、運営体制の現状と課題等を解明することを目的としインタビュー調査を実施する必要がある。(4)本研究により得られた研究成果を日本教育学会、日本教育制度学会、日本教育政策学会等で報告し、研究者間で議論し、ご助言をいただいた後、論文にまとめ発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
未使用金が生じた理由:コロナウィルスの影響により、旅費を使用しなかった。 次年度での使用計画:研究に必要な物品、研究調査、学会参加のための旅費として使用する予定である。
|