2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23373
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Research Institution | Osaka University of Comprehensive Children Education |
Principal Investigator |
金重 利典 大阪総合保育大学, 児童保育学部, 講師 (10847619)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 乳児 / 表情理解 / 個人間機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、乳児における表情(感情表出)の個人間機能を理解する能力を調べるために、2つの実験を計画していた。具体的には、表情が表出者とは別の人物の行為を誘発する機能を実験1で、表情が表出者とは別の人物の感情を引き起こす機能を実験2で実施する計画であった。表情から感情価を理解するとされている生後6か月の時期に上記の能力が見られるかを調べることは、感情が他者へ影響を与えるものであることを乳児期から理解しているかを明らかにするのみならず、近年着目されている非認知的能力をいかに乳幼児期から育てるかについての基礎的な知見を提供するものと考えられる。 本年度は所属大学のある大阪の新型コロナ感染症罹患者数が落ち着いた9月から実験1のデータ収集を始めたが、年明けに再び新型コロナ感染症の罹患者数が増えたことにより、所属大学では2022年1月から入構制限が実施された。そのため、予定していた実験計画は実験1の実施途中で止まっている状況である。このような状況のため、20年度と同様、乳児の表情理解能力に関する文献を調査し、実験実施後の結果を報告する際の資料をまとめた。 この文献研究において前年度に加えて明らかとなったことは、例えば道徳的判断といったような領域において、乳児であっても他者間で行われるコミュニケーションに対する理解を示すことが近年明らかにされていることである。この近年見出されている乳児の他者間のコミュニケーションに対する理解という視点からも、本研究課題の実施により、それを感情領域においても広げる視点を提供できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は大阪の新型コロナ感染症のためデータ収集を見送ったが、2021年度6月・8月の職域接種により、所属大学の学生・教職員のワクチン接種がすすめられた。そのため、2021年度9月からのデータ収集の実施を目指し、所属大学と学外者の入構手続きについての確認を進めた上で、協力児のリクルートを行い実験1のデータ収集を始めた。しかし、実施中にデータ記録の設備上の問題点が見られ、また実験刺激をより乳児の注意をひくものへ変更する必要性が明らかになった。そのため、2021年の年末にかけ、実験機材の調整や刺激の修正のための準備を進めていた。 2022年1月になると、再び大阪での新型コロナ感染症罹患者数が増え、所属大学では入構者の制限が行われ、学生も入構が禁止される状況となった。そのため、協力児の実験参加が難しくなるのみならず、新しい刺激の撮影、妥当性の確認のための調査が難しい状況となった。2022年3月に蔓延防止等重点措置に基づく要請が解除されたため、現在は実験の実施に向け、再び参加児のリクルートを行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、乳児に実際に刺激を呈示し、その注視時間を測定する形で表情理解能力を調べるものであるため、オンラインによる質問紙調査や面接などの方法を用いて研究を進めることは実験の統制上非常に難しい。そのため、所属大学に学外者の入構制限についての確認を取ったうえで、データ収集のために協力児のリクルートを進めていく。これに関しては、これに関しては、これまでのリクルート方法に加え、大学の有するホームページ上で募集を行うためのページを現在作成しており、公開準備中である。また、ホームページ上での募集が芳しくない場合は、リクルートを行う企業を介した募集を行うことを検討している。 また、データ収集が可能となった際に必要な体温を測定・記録するための機器や、消毒のための備品はすでに確保しているため、協力児の募集が始まった場合に、すぐに実施できる環境を整えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症により、実験の協力児を所属大学に招きデータ収集を行うことが困難となったため、データ収集に関わる謝金の使用がほとんどなかったためである。また、データ収集時に必要な実験補助者の雇用も計画していたが、新型コロナ感染症対策として実験者を少なくする措置のため雇用を行わず未使用のままとなった。さらに、資料収集のために参加を予定していた国際学会についてはオンラインでの実施となったため、計画していた航空費や宿泊費も使用しなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。 使用計画としては、使用していなかった協力児への謝金や実験補助者の雇用費は、データ収集が開始された際に状況に応じて使用することを計画している。また学会の旅費に関しては、資料収集のために新たな学術会議への参加を予定しており、その際に使用する計画である。また所属大学内での新型コロナ感染症対策用費用として、消毒のための備品の費用についても申請時にはない追加の事項として使用する予定である。
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