2019 Fiscal Year Research-status Report
高機能自閉スペクトラム症児の抑うつの予防に向けたSSTに関する基礎研究
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19K23383
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
中西 陽 奈良教育大学, 特別支援教育研究センター, 特任准教授 (30846845)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害 / 社会的スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
知的発達に遅れのない高機能自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders: ASD)の子どもは,二次的な問題として抑うつ症状を抱えやすく,児童期から青年期にかけて悪化させやすいことが明らかにされてきた。本研究においては,ASD児の社会的スキルを高めることで,抑うつ症状の悪化を予防することができると予測し,まずは基礎的な研究として,ASD児の社会的スキルを対人場面での適応的な行動の多さ,不適応的行動の少なさの2つの側面から測定することができる尺度をそれぞれ開発し,多変量解析により抑うつ症状に対する予測について検討することを目的としている。2019年度は,対人場面での適応的行動を測定する社会的スキル尺度について追加で行っていた検討が終了し,尺度の信頼性と妥当性および臨床的有用性が十分に確認された。また,これらの研究内容は学術誌にも掲載された(中西・石川・青山・杉若, 2020)。 一方で,当初予定していた不適応的行動を測定する尺度の開発については,項目の選定に時間を要したため,実質の調査および信頼性,妥当性,臨床的有用性の検討までを終了させることができなかった。2019年度3月ころから,コロナ禍において非日常的な事態が続いており,子どもの日常的なコミュニケーションや内在的な問題についての調査を行うのに躊躇している状況にあるが,小・中学校への日常的な登校が落ち着き次第,質問紙調査を実施し,多変量解析によるモデルの検討についても進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は,2019年度に新たにASD児の測定に特化した不適応行動尺度の作成と信頼性・妥当性の検討までを終了させることを目標としていた。しかしながら,先に開発を行っていた適応的な行動を測定する尺度の臨床場面での利用について検討したところ,さらに明らかにしておくべき点があると考えられたため,一連の研究の中でそちらの検討をまずは優先することが必要であると考え,当初の計画より進行状況が遅れる結果となった。加えて,研究対象者の募集を行う予定であった当大学の特別支援教育研究センターの建物改修工事,また,それに伴う引っ越し作業,申請者自身の研究室の移動等に加えて,2019年度3月からコロナ感染拡大防止のため閉室状態が続いており,質問紙調査の実施が困難な状況となってしまった。2020年度は当センターの開室次第,少しずつ調査対象者の募集を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,2019年度に実施予定としていたASD児の不適応行動を測定する尺度の作成および信頼性・妥当性の検証に加えて,予定通り,ASD児を対象とした個別のソーシャルスキル・トレーニング(SST)を実施し,適応行動尺度および不適応行動尺度の反応性について検討を行う予定である。当初は,反応性の検討が終了次第,ASD児の行動的要因が社会的適応感(友人関係の適応感)と精神的健康(抑うつの問題)に及ぼす影響の検討を行う予定であったが,これらは同時進行で行っていくこととする。
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Causes of Carryover |
前年度は,当初予定していた調査を様々な事情により実施することができなかったため,民間調査会社への委託による調査にかかる費用,および当大学で対象者を募集し,実施する予定であった調査の参加者に対する謝金として計上していた費用を次年度に繰り越すこととなった。繰り越した費用は,予定通り,委託調査,研究協力者への謝金に充てる予定である。また,もともとの2020年度使用予定額については,特に変更することなく,当初の予定通り使用する。
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