2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23407
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
榎園 誠 東京理科大学, 理工学部数学科, 助教 (30843461)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | Zariski分解 / 消滅定理 / Reider型定理 / 拡張定理 / ゴナリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、主に代数曲面上の因子に関するZariski分解の整数係数版を導入し、そのいくつかの応用を与えた。以下に具体的な内容を記す。 Zariskiは、曲面上の有効因子が有理数係数のネフ有効因子と有理数係数の負定値な有効因子に一意的に分解されることを示し、この分解は今ではZariski分解と呼ばれている。一方で、有効因子が通常の整数係数の因子であっても、この分解に現れる二つの因子は整数係数とは限らない。本研究では、正規曲面上の擬有効因子がある種の正値性を持つ因子(以下、整正な因子と呼ぶ)と負定値な有効因子に一意的に分解されることを示した。また正規曲面上の巨大かつ整正な因子に対し、コホモロジーの消滅定理を示した。これは曲面の場合の川又-Viehweg消滅定理の自然な一般化である。この応用として、随伴線形系に関するReider型定理を相対的な場合を含む形に一般化し、簡単な証明を与えた。またこの応用として、Serranoによる非特異曲面上の曲線上定義された射の拡張定理を、曲面が特異点を持つ場合や、曲線が既約とも被約とも限らない場合に一般化した。この拡張定理により、これまで計算することが難しかった重み付き平面曲線のゴナリティーなどを、重みやその曲線の次数を用いて評価することが出来た。他にも正規曲面上の線形系に対して、その(特異なものも許す)メンバーの(擬)ゴナリティーが不変であることの十分条件を求めることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の研究対象は、主に2次元以上の完全交叉多様体や特異点であり、曲面の理論や高次元代数多様体の理論を研究手法として用いる。当該年度の研究により、曲面の一般論を進展させることが出来た。一方で、当該年度は感染症の拡大により多くの研究集会が中止または延期となり、本研究に必要な(主に高次元代数多様体に関する)知識を効率良く得ることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の研究方策は、主に一般ファイバーが完全交叉であるファイバー多様体の構造を相対標準写像を介して理解することである。完全交叉な埋め込みを与える(相対)線形系と相対標準写像の食い違いを調べることで、数値的不変量たちの間の関係を調べ、スロープ不等式を導出する。
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Causes of Carryover |
当該年度は、感染症の流行などにより多くの研究集会などが中止または延期になり、旅費として使用する予定であった分が使えなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は研究集会などへの旅費のほか、数値計算用のコンピューターや研究に必要な文献を購入するために助成金を用いる予定である。
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Research Products
(5 results)