2019 Fiscal Year Research-status Report
輻射多流体計算を用いたより現実的な原始惑星系円盤内部進化モデルの構築
Project/Area Number |
19K23469
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仲谷 崚平 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (40846391)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 星形成 / 惑星形成 / 原始星円盤 / 原始惑星系円盤 / ダスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は惑星系の起源を解明することを目的に、惑星誕生の現場である原始星円盤・原始惑星系円盤の内部構造進化、特に円盤を構成するガスとダストの独立な力学的・物理的・化学的構造の進化を理論・観測の両側面から明らかにする。当該年度は、ダストとガスの運動を独立に扱う多次元輻射多流体シミュレーションコードの開発を推進しつつ、原始星円盤周りで起こり得る惑星形成についての観測的研究に主として取り組んだ。この研究では、L1527 IRSと呼ばれる系にある生まれて間もない原始星円盤をAtacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA)とVery Large Array (VLA)で観測することで得られたデータを解析し、惑星形成の兆候と考えられるsubstructureを発見した。このようなsubstructureは惑星形成後期段階にある原始惑星系円盤ではこれまで多く発見されてきたが、原始星円盤のような早期の段階に存在しているかどうかについてはよく理解されていなかった。我々の研究では、これを初めて例証し、惑星形成がこれまで理解されてきたよりも早い進化段階で起こりうることを示した。これは、近年主流になりつつある、惑星形成が星惑星形成初期に始まるというシナリオを支持する結果である。本研究成果は、他の原始星円盤にも惑星形成の兆候があり得ることを示唆するため、多くの関連研究を誘発することが期待される。 一方、多流体計算コードについては現在開発途中段階にあるが、既に適用範囲が広く、多くの他研究者に提供され、星形成、ブラックホール降着、惑星蒸発、分子雲蒸発、円盤蒸発等の研究に応用された。本年度、当コードが使用された研究に関して、出版済み論文が2本、投稿済み論文が2本、投稿予定論文が5本ある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルスによる海外渡航制限により、本年度後期に予定されていたテュービンゲン大学滞在と大学研究者との共同コード開発は延期になったが、代わりに後に取り組む予定であった観測的研究の予定を繰り上げ着手することにした。研究成果をまとめた論文は受理され、研究成果発表も複数行った。また、開発されたコードは自身でもアップデートを継続しており、予定通り他研究者に提供され多種の研究の誘発・推進に貢献させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航制限が解除され次第、延期されていた共同コード開発のためテュービンゲン大学に赴く。最新アップグレード版が公開されたPLUTOコード等を参考にして、輻射多流体コードのアップデートを完了し、随時予定されている原始惑星系円盤光蒸発シミュレーション、恒星系各進化段階におけるダストおよびガス運動の多次元輻射流体シミュレーションに取り組む。本研究では、(i) 円盤が損失するダスト量、および円盤に残り惑星形成に利用可能なダスト量、(ii) ダストサイズの時間進化、(iii) ガスとダストの相対的分布の進化、(iv) 円盤内で惑星が形成され易い場所(ホットスポット)の分布を多種の中心星の系について系統的に明らかにする。また、本コードを星惑星形成研究に限らず、初期宇宙の銀河・ハロー進化など多成分の物質(銀河・ハローの場合はダークマターとバリオン)を多流体的に扱うような他分野研究にも応用する予定である。 得られたシミュレーションスナップショットをポストプロセシングすることにより、現在得られている原始星円盤や原始惑星系円盤の高解像度観測データと直接比較することで、観測された物理・化学構造の起源を明らかにし、またその後に辿る進化を予言することで、観測指針を与える。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により予定されていた海外渡航が延期されたため。滞在期日が設定され次第先方に赴く予定である。その際に次年度使用分を充てる。
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