2020 Fiscal Year Research-status Report
輻射多流体計算を用いたより現実的な原始惑星系円盤内部進化モデルの構築
Project/Area Number |
19K23469
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仲谷 崚平 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (40846391)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 原始星円盤 / 原始惑星系円盤 / デブリ円盤 / 輻射流体計算 / 電波観測 / 星形成 / 惑星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は惑星系の起源を解明することを目的に、惑星誕生の現場である原始星円盤・原始惑星系円盤の内部構造進化、特に円盤を構成するガスとダストの独立な力学的・物理的・化学的構造の進化を理論・観測の両側面から明らかにする。本年度始めは、原始星周囲のダスト円盤について、観測的研究に主として取り組んだ。本研究では、L1527 IRSと呼ばれる系にある極めて若い原始星円盤をAtacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA)とVery Large Array (VLA)で観測することで得られたデータを解析し、惑星形成の兆候と考えられるsubstructureを発見した。L1527 IRSは今までsubstructureが発見された系の中で最も若く、惑星形成がこれまで理解されてきたよりも早い進化段階で起こりうることを例証した。本研究成果は、アストロフィジカルジャーナルレターズにて出版された。 本年度後期には、星形成最終段階の天体であるデブリ円盤についての研究に取り組んだ。デブリ円盤は古典的にはガス欠乏天体とされてきたが、近年ガスを豊富に保有するデブリ円盤(ガスリッチデブリ円盤)が20天体ほど発見された。このガスの起源は未解明である。その中で我々は、詳細な星進化と円盤進化を考慮することで、原始惑星系円盤にあったガスがデブリ円盤段階まで生き残ることができることを輻射流体シミュレーションにより示した。本研究結果は論文にまとめられ、現在その論文を投稿中である。 本年度は他にも、開発したコードを高赤方偏移ミニハローの散逸過程の研究にも応用した研究を行なった。成果をまとめた論文がアストロフィジカルジャーナルにて出版された。 多流体計算コードについては現在もアップデートを続けている。上のデブリ円盤の研究では、化学反応モジュールを大幅にアップデートした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルスによる海外渡航制限により、本年度に予定されていたテュービンゲン大学滞在と大学研究者との共同コード開発が無期限延期になった。本年度は、他のプロジェクトに主として取り組むこととなった。研究成果をまとめた論文の出版や研究成果発表も複数行い、多種の研究の誘発・推進に貢献した。一方で、本科研費課題について費やした時間が予定よりも少なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航制限が解除され次第、延期されていた共同コード開発のためテュービンゲン大学に赴く。 輻射多流体コードのアップデートを完了し、随時予定されている原始惑星系円盤光蒸発シミュレーション、恒星系各進化段階におけるダストおよびガス運動の多次元輻射流体シミュレーションに取り組む。まずは、中心星と外部輻射場に曝された円盤の蒸発シミュレーションを行い、ダスト分布が円盤散逸過程に与える影響(局所的加熱率や冷却率、質量損失率など)を定量的に明らかにする。同時に、円盤ダスト分布も明らかにして、近年の電波観測と比較することで円盤散逸過程の兆候が見られるか探る。本研究や、これまでの研究で得られたシミュレーションスナップショットをポストプロセシングし、現在得られている原始星円盤や原始惑星系円盤の高解像度観測データと直接比較することで、観測された物理・化学構造の起源を明らかにする。またその後に辿る進化を予言し、観測指針を与える。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた海外研究所滞在が延期されたため。渡航制限が解除された場合は渡航費・滞在費として使用する。それが叶わない場合は、リモートでの共同研究推進のための通信費やプラットフォーム立ち上げ等に係る費用として使用する。
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