2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of photoelastic measurement system for visualization of unsteady hydrodynamic stress field
Project/Area Number |
19K23483
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
武藤 真和 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30840615)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 可視化技術 / 流体計測 / 圧力計測 / 偏光計測 / 血管障害 / 光弾性法 / 複屈折 / 高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
クモ膜下出血を引き起こす脳動脈瘤の破裂メカニズムの解明には,血管内を流れる血液の非接触非定常せん断応力場の調査が鍵となる.本研究では非接触非定常な流体応力場の計測手法の開発を目的に掲げており,令和元年度では,光学系と流路の設計により計測システムを構築し,計測に最適な作動流体を選定した. 本手法では,複屈折を有する鎖状高分子流体を作動流体としており,高分子流体が応力負荷時に発する偏光情報 (位相差分布) を高速度偏光カメラ (CRYSTA P1-P, Photron Co., Ltd.) により可視化できる.位相差を高感度に取得できる光学系の構築は最優先事項であり,また,高分子の高配向状態を発現させるために大きな圧力勾配を負荷できる流路の設計も求められた.光学系設計では,光源と,光源波長および高分子の偏光状態に対応したフィルタを選定した.また,流路設計では,数値解析ソフト (COMSOL Multiphysics (R)) の利用により圧力勾配の解析を実施することで,矩形断面のベンチュリ形状を有するガラス流路を製作した.以上より,非接触非定常な位相差分布の偏光計測システムを構築した. 作動流体の選定では,当初は三種類の高分子 (キサンタンガム,カルボキシルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース) を候補としていたが,それらと比してセルロースナノクリスタルの発する位相差が最も高感度であることを明らかにした.調査では,各種高分子流体を一定の流量で流路内に流し,流れが定常状態になるまでの緩和時間と位相差を計測することで選定した.さらに,動的粘弾性測定法によるせん断粘度計測を実施した.全ての高分子流体が血液と同じshear-thinning性流体であったが,特にセルロースナノクリスタルはせん断粘度を高分子濃度により広い範囲で調整でき,その有用性が示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の研究計画は,主に「計測系の確立」と「高分子の選定」の二点である. 計測系の確立においては,高速度偏光カメラと円偏光光源を取り入れた計測システムを構築した.また,数値解析ソフトにより設計した流路を流れる高分子流体に対して,計測システムを用いた位相差分布の取得に成功した (武藤ら,日本流体力学会年会,2019) (Muto et al.,ASV15,2019). 高分子の選定では,本計測システムに最適な作動流体となる高分子流体の選定を試みた.液体の状態で位相差を発すると予測された四種類の高分子流体に関して,位相差計測および動的粘弾性計測を行った.その結果,最も高感度な位相差を示し,また,せん断粘度の調整も容易であった,セルロースナノクリスタルを採用した (Muto et al.,APS/DFD,2019). 上述の研究成果に加えて,流体応力場と位相差分布の空間強度分布の違いに関しても調査を行った (武藤ら,ながれ,2019).応力場は数値解析により導出され,実験同様の構造・寸法を有する三次元流路内を流れる高分子流体に関して実施された.応力場の数値解析結果と位相差分布の実験結果を照らし合わせた結果,両者の空間強度分布が良い一致を示した. 以上の点で,当初予定していた計画を全て遂行しており,それに加えて空間強度分布の評価も実施済みであることから,現在までの本研究の進捗状況は当初の計画以上に進展していると評価できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
令和二年度では,流路内流体の位相差分布ではなく応力場を可視化する計画を掲げている.そこで,先導実験として,レーザードップラー式非接触応力センサを用いて流路壁面近傍のせん断応力を計測することで,位相差と応力値が対応した校正曲線の取得を試みた.しかし,位相差は主応力 (せん断応力をゼロにした面に作用する垂直応力) に比例するため校正に不向きであり,また,この方法では白濁した高分子流体の透過率の低さが計測に支障をきたすことが判明した. 上述の事態に鑑みて,校正手法をDripping-onto-substrate capillary break-up extensional rheometry (以下,CaBER-DoSシステム) に変更する.CaBER-DoSシステムとは,粘弾性流体の液糸の伸張挙動を観測することで,粘度や応力を計測できるレオロジー測定手法である.伸張状態にある高分子流体の液糸に作用する位相差を光弾性法により計測すれば,位相差と主応力の同時計測が可能になると考えられる. 取得した校正曲線を用いて,矩形直線流路内を流れる高分子流体の流体応力場の可視化を目指す.また,脳動脈瘤内部のせん断応力計測への適用に向けた指針を得るため,複雑形状を有する流路内部の任意断面における応力分布の可視化を試みる. 成果は,流体力学会年会,APS/DFDなどの国内外の学会において発表を予定している.また,査読付き医療ジャーナルであるJournal of Controlled Release誌などへの論文公表を予定している.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については,本年度主な物品としてあげていた高圧対応式シリンジポンプを購入しなかったためである.当初,作動流体の候補としていた高分子は位相差の強度が弱く,大きな圧力勾配を負荷できる高圧式ポンプが必要とされていた.しかし,セルロースナノクリスタルを利用することで低圧式ポンプでも実験を進めることができたため,高圧式ポンプの購入を見送った. 次年度使用額の使用計画としては,光源の購入費用および流路の製作費用に充てる.令和元年度の実験で使用した光源は,光出力が安定せずスポット径も小さいという欠点により,非定常計測に支障があった.そこで,安定した光出力を有し,かつ,スポット径が大きい光源を新たに導入する予定である.また,脳動脈瘤内の応力場計測に向けた指針を得るため,複雑流路形状を有するガラス流路またはシリコン流路を製作する.新たな校正手法であるCaBER-DoSシステムに関しては,現有の備品で代用が可能である.
|
Research Products
(5 results)