2019 Fiscal Year Research-status Report
超音速大気の運動エネルギーを活用した革新的大気吸い込み式小型電気推進機の原理実証
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19K23486
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 友祐 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (10847685)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 電気推進機 / 空気吸い込み式 / プラズマ / 高エンタルピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,高度150km程度の軌道で使用する新たに提案する作動原理による空気吸い込み式電気推進機の作動を地上試験において実証することにある.このためにはこの軌道における環境を模擬できる風洞が必要となる.当該年度は,これに近い環境を所属研究室で利用可能な設備の範囲内で模擬することができる高エンタルピー風洞を新たに考案し,設計,製作まで行った.この風洞は,薄膜で仕切った小部屋の中に空気を封入し,そこに最大0.2 Jパルスレーザーを集光することで作動する.集光点における絶縁破壊により生じたプラズマがレーザーのエネルギーを吸収することで数万度に達する高温空気を生成し,同時に薄膜が破けて真空にひいたノズル部へと流れ込むことで,高エンタルピーかつ希薄な気流を作ることができる.この風洞によって生成された気流の速度を測定するため気流の流路に挿入することができるセンサを二つ製作した.離して配置した二つのセンサに対する到達時間差から気流の速度を測ることができる.この計測には1マイクロ秒ほどの応答速度で電圧変化を測定する必要があり,このために必要なオシロスコープを新たに購入した.推進機の設計のためには希薄な気体の動きとプラズマの動きを解くことができる計算コードが必要となるが,これについても現在開発中であり,中ほどまで完了している.今後はこの風洞の動作確認を行った後に推進機を製作し,実証実験を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費は取得から半年が経過しており、残りが1年であることから全期間の三分の一が経過した段階である。本研究は大まかに風洞の製作、計算コードの開発、推進機の製作の三段階に分けられるが、これまで風洞の製作が終わり、計算コードは開発は中ほどまで終わっており、おおよそ全体の三分の一程度の進捗であるため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
製作した高エンタルピー風洞を作動させて生成気流の速度の気流を測定する.気流の速度は,離れて配置した2つのセンサを用いて気流の到達時間の差から求める.入射させるパルスレーザーのエネルギーを変更しながら流速を測ることで目的の気流を達成する条件を探す. 上記の実験と同時に推進機内部の空気の流れを模擬できる数値計算コードの開発を行い,これを用いて推進機の設計を行う. 実験,数値計算を基にデモンストレーション用の推進機を設計,製作し,高エンタルピー風洞とつなげて作動試験を行い,実際に推進機が動作することを示す.過去に高エンタルピー気流中での作動を実証した推進機は例がなく,これが達成できれば非常に意義がある成果となると考えている. ここまでが本科研費の期間中における進捗目標であるが,早めに達成できた場合はノズル下流に取り付けたイオン流速計でイオンの速度を計測し、さらにドップラーシフトの計測から中性粒子の速度の計測まで行う。イオン加速電圧を変化させて電極間電流と、各粒子の速度を測定し作成した数値計算コードから得られる結果と比較する。
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Causes of Carryover |
3月25日と26日に予定していた出張がコロナウイルスの影響により急遽取りやめになり、そこで支出予定だった分の予算が余ったため次年度使用額が生じた。当該年度は学会等の中止が多く、外部での発表や他研究者との意見交換の機会が少なくなってしまったため、次年度はコロナウイルスが収束後に学会等の参加を増やし積極的に意見交換を行っていきたいと考えており、そのための予算として使用する予定である。
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