2019 Fiscal Year Research-status Report
新しい酸化物イオン伝導体ファミリーの創製と伝導メカニズムの解明
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19K23647
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村上 泰斗 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (60846509)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化物 / イオン伝導体 / 結晶構造 / 中性子回折測定 / 六方ペロブスカイト関連構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
燃料電池や酸素センサーなど幅広い応用のため、酸化物イオン伝導体の研究は数多いが、蛍石型やペロブスカイト型など、研究対象は特定の結晶構造に限られていた。本課題では、候補物質を高速スクリーニングし、既存の材料を上回る伝導度を示す新構造型酸化物イオン伝導体の発見および伝導機構の解明を目的としている。今年度は、これまで酸化物イオン伝導体の報告例がほとんど無かった六方ペロブスカイト関連酸化物に着目し、新規酸化物イオン伝導体の探索を行った。(1)Ba7Nb4MoO20に過剰酸素を導入した組成を固相法により合成し、伝導度を評価したところ、中低温で既存の材料を上回る高い酸化物イオン伝導度を示すことを見出した。さらに、中性子回折測定データへの構造解析および結合原子価法により、Baの周りを二次元的に酸化物イオンが移動することが示された。(2)同じく六方ペロブスカイト関連酸化物に属するBa5Er2Al2ZrO13および関連物質の合成、伝導度評価を行い、これらの物質が中低温で高いプロトン伝導度を示すことを発見した。Ba5Er2Al2ZrO13は、プロトン伝導体としては珍しくノンドープで高いプロトン伝導度を示すが、この原因を中性子回折測定データへの構造解析および結合原子価法により検討し、Ba5Er2Al2ZrO13に元々含まれる酸素欠損層がプロトン伝導に重要な役割を果たしていることを明らかにした。本成果は、論文投稿中であり、特許も出願中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、これまで酸化物イオン伝導体・プロトン伝導体の報告例がほとんどなかった六方ペロブスカイト関連酸化物において、高い性能を示すイオン伝導体を次々と発見している。特に、申請当初は主に酸化物イオン伝導体に絞って材料探索を行っていたが、偶然にも高いプロトン伝導度を示す新材料の開発にも成功している。これらの成果は、これまでイオン伝導体として物質探索の対象外であった六方ペロブスカイト関連酸化物に新たな知見をもたらすものである。このような状況から、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き六方ペロブスカイト関連酸化物において新規イオン伝導体の材料探索を行う。また、アクセプタードープなどの化学修飾を施すことによりイオン伝導度の向上を狙う。さらに、結合原子価法によるスクリーニングから新しい構造型のイオン伝導体の候補を見出し、伝導度の評価を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた電気炉や消耗品が次年度の購入となったため。次年度は、年度がずれての購入となる物品費として使用する予定である。
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