2019 Fiscal Year Research-status Report
骨標的化高分子ミセルを利用したFGF23発現制御法の確立と腎線維症治療への展開
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19K23812
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
山下 修吾 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (30845730)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 薬学 / 薬物動態学 / 体内動態制御 / 高分子ミセル / ポリペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はペルオキシソーム増殖剤活性化受容体δアゴニストであるGW0742を封入した骨選択性に優れた高分子ミセルを創製し、慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)を起因とした腎線維化症の治療戦略の構築を目指すものである。 令和年度では、GW0742を効率よく封入可能な骨ターゲティング型高分子ミセルの製剤デザインおよび体内動態制御の最適化を試みた。すなわち、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸と疎水性アミノ酸であるフェニルアラニンのポリペプチドで構成された骨ターゲティング型高分子ミセル(Aspミセル)の組成比、鎖長、粒子密度など製剤の物理化学的特性を系統的に評価し、これら物理化学的パラメータが及ぼすGW0742の骨移行性への影響を検討した。 AspミセルへのGW0742の封入は溶媒希釈法を用いて、GW0742封入Aspミセルを調製した。Aspミセルは、フェニルアラニンの組成比の増大、ならびにポリペプチド鎖長の増大に伴いGW0742を効率よく封入可能になる一方で、粒子径の増大ならびに粒子密度の低下を示した。また物理化学的パラメータを評価する過程で、Aspミセルは熱応答性を示すことが新たに発見された。これら物理化学的パラメータの異なるGW0742封入Aspミセルの、マウスにおける体内動態は尾静脈内投与後の臓器中GW0742をLC/MS/MSで測定することで評価した。粒子密度が高く粒子径の小さいGW0742封入Aspミセルは、粒子密度が低く粒子径の大きいそれと比較し4.6倍高い骨移行性を示した。以上、本研究成果をさらに発展させることにより、骨指向能および熱応答能を両立するポリペプチドを基盤とした新規DDS製剤の開発およびCKD-MBD治療の実現へと近づく成果を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画において、GW0742の輸送キャリアは骨標的化の実績があり、調製方法も確立されていたデンドロン型ミセルを用いる予定であった。しかしながら、GW0742がデンドロン型ミセルに全く封入されないという想定外の事態が起こったため、製剤デザインを一から見直す必要性に迫られた。そしてGW0742の封入能および骨指向能を両立した製剤の最適化に約半年の時間を要したため、当初の研究予定から遅れてしまう結果となった。しかしながら、製剤最適化の過程で、今回開発したAspミセルが熱応答能を有するという思わぬ副産物も発見されたことから、本研究がCKD-MBDの治療開発に発展的な成果をもたらすことが期待できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和年度までに、GW0742を封入した骨指向能および熱応答能を両立するAspミセルの開発に成功した。そこで令和2年度では、GW0742封入Aspミセルと骨の温熱療法を併用した新規CKD-MBD治療戦略を構築する予定である。そのために、加温時におけるAspミセルからのGW0742放出性ならびにCKD-MBDモデルマウスを用いた腎線維化の抑制効果について系統的に評価していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究に係る支出の残金として次年度使用額が生じた。 次年度に計画している研究の物品費として使用予定である。
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