2020 Fiscal Year Annual Research Report
肝がん微小環境におけるヒト肝星細胞由来老化関連分泌因子の機能解析
Project/Area Number |
19K23951
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小田桐 直志 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (10623241)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 肝星細胞 / 細胞老化 / 老化関連分泌表現型 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝障害が起こると肝星細胞が活性化し、Collagen Type I Alpha 1 Chain(COL1A1)やalpha-smooth musle actin(αSMA)を産生することで組織の創傷治癒を促進するが、肝障害が慢性的に持続する場合は肝星細胞が過剰に活性化し続け、COL1A1やαSMAを過剰産生することで肝線維化が進行すると考えられている。この過程ではTransforming Growth Factor-β(TGFβ)-SMAD2/3経路が重要な役割を果たしている。肝星細胞は細胞老化を起こすとともに、このTGFβ-SMAD2/3経路の反応性が変化している可能性があり、その機序を探るべく実験を行った。老化肝星細胞ではTGFβを添加してもSMAD2/3の核内移行とSMAD4の発現が抑制され、αSMAとCOL1A1の発現誘導も抑制されていた。老化肝星細胞では、核内のHIF1αとHIF2αの発現が増加していた。低酸素やデフェロキサミンなどによって肝星細胞のHIF経路を活性化させると、CRBP1やSMAD4の発現量も低下した。また、SMAD4はERK1/2によって誘導されるmiR-34aにより発現抑制されるが、老化肝星細胞ではこのERK1/2経路が活性化していることが既に知られている。これらの結果から、HIF経路とERK1/2-miR-34a経路がSMAD4を発現抑制することでTGFβ-SMAD2/3経路を抑制する可能性が示唆された。これらのことは、加齢に伴う肝臓の創傷治癒能力の低下を示す根拠となり、肝線維化に対する治療開発の一助となる可能性もあると考えられる。
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