2019 Fiscal Year Research-status Report
在宅生活でのシーティング浸透のための研修と介入効果に関する実証研究
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19K24207
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Research Institution | Mie Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
篠原 真咲 三重県立看護大学, 看護学部, 助教 (30846366)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | シーティング / 在宅 / 車いす / 専門職 |
Outline of Annual Research Achievements |
総務省の2016年の社会生活基本調査の生活時間に関する資料では、睡眠時間7.4時間、食事1.4時間、通勤・通学・移動時間約1時間、テレビ・新聞等で2.3時間、休養・くつろぎで1.3時間となり、座位に関しては最低でも5時間となる。ここに仕事関連がデスクワークとなれば、4時間以上が座位時間となり、仕事以外の生活時間の9時間程度を座位で過ごすこととなり、人の生活は座位が中心であることがわかる。生活時間の中の長い座位時間を快適かつ安全・安楽に過ごすためにもシーティングは重要となる。特に、車いすを利用する人々にとって車いすで過ごす時間は、仕事や休息をする生活の上で日常を過ごす大切な場所である。また、長時間座位で過ごすことによる褥瘡や側弯症などの二次合併症の予防もしなければならない。その為に車いす生活者を『シーティング』という概念を用いて快適にかつ安全に過ごせるように支援する方法がアメリカから伝えられ、医療者を中心に広まりつつある。この概念は、車いすや褥瘡予防クッションを用いて、正しい姿勢をとることができる人及びそれを支援する人が理解しておかなければならないことといえる。 日本では、約30年前にシーティングの概念が導入されたが、医師の指示の下にシーティングが医療として提供される。シーティングはPTやOTを中心に広まってきてはいるが患者自身、看護師等を含めた専門職すべての人にシーティングの概念を浸透させ、PTや看護師をはじめとする多様な専門職が主体的に取り組めるシーティングのシステム構築をしていく必要があると考える。しかし、専門職種ごとにシーティングに関する知識・意識を検証した先行研究はないため、今回のアンケート調査で明らかにし、今後の研究の基礎となる資料とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シーティングに関する文献検索を実施し、車いすを日常生活で使用する人の中には、ADLが低下した方等それぞれの用途は違うが、主に下肢の肢体不自由者が代表的である。前田(2018)の報告では、日本における外傷性脊髄損傷の新規発生率は、100万人あたり年間30~50例である。さらに、坂田・出田・前田他(2015)の報告では、福岡県内の2013年の新規脊髄損傷者の平均年齢は60.7歳で70歳代にピークをもつ一峰性であることが明らかにされ、他県も同様に脊損者の高齢化が進んでいると推測される。さらに松岡・住田(2017)の報告では、褥瘡による再入院の平均入院期間が136.6日と褥瘡以外(尿路感染や肺炎等)の再入院の平均入院期間の20.1日よりも大幅に長期間であったことから、入院が長期間となった高齢者の車いす生活やそれに伴う褥瘡発生による医療費の増大は社会的にも大きな問題となっていることが指摘されている。延本・岡野・篠山他(2017)は、褥瘡は脊損者に生じる代表的な合併症であり、脊損受傷後の入院期間において24~28%の発生率であり、脊損者の80%以上は障害において褥瘡を経験することから、脊損者における褥瘡発生率は非常に高いと述べている。 現在のシーティングに関する最新の情報収集を行うとともに、シーティング・コンサルタント協会のシーティング・コンサルトを目指してシーティング技術の獲得と再確認を行い、実際の介入時に技術提供が行えるように準備を進めていた。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、在宅における高齢者施設等への介入が困難な状況となっている。その為、各施設の状況の感染拡大とならないよう介入は一旦中止し、学内での倫理審査の申請中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度文献検索を実施し、シーティング介入技術の向上に努めるとともに、倫理審査の通過後に在宅の多職種者にアンケートを配布できるよう、各職種の協会長に研究についての趣旨を説明し、承諾が得られた後に各施設の所属長にアンケート用紙を配布して回収をして、集計し、分析を行っていく。 新型コロナウィルス感染の状況を確認しながら、再度介入の時期を検討し、介入後フォーカスグループインタビュー等を行いながら再度分析を進めていく予定である。
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