2021 Fiscal Year Research-status Report
腹部外科的切除術を受けるがん患者の健康リテラシー・身体活動と術後の予後の関連
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19K24279
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
岩倉 正浩 秋田大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30851802)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 健康リテラシー / 腹部腫瘍 / 切除術 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
腹部臓器の腫瘍に対して切除術と手術前後のリハビリテーション(リハ)を受けた患者を対象に、手術前の健康リテラシー(HL)の低下が手術後の身体機能や生活の質(QOL)の低下、手術後の重篤な合併症、入院期間の延長、退院後90日間での再入院の増加に関連するかどうかを検証した。 112名の患者に対し、研究参加の同意を得るためにインフォームドコンセントを行なったところ、101名が選択基準を満たしつつ、研究参加に同意した。最終的に、97名(健康リテラシー低下:42名、低下なし:57名)が解析対象となった。HLは、HLの包括的な評価であるEuropean Health Literacy Survey Questionnaire日本語版を用いて計測した。身体機能は握力、快適歩行速度、30秒立ち上がり試験で評価した。QOLはEuroQol 5-dimension 5-levelを用いて評価した。HLと手術後の経過との関連に影響しうる要素として、年齢、性別、体格、栄養状態、教育歴、併存症、認知機能、日常生活自立度、身体機能、身体活動、腫瘍の部位、種類、ステージ、手術手技を取得した。これらの影響を調整した上で、HLと手術後の経過の関連を検証した。 結果、HLが低下している患者は、握力が低下しにくいという結果が得られたが、それ以外の身体機能やQOLの変化とは関係しなかった。加えて、HLの低下は、手術後の重篤な合併症や入院期間の延長、退院後の再入院増加にも関連しなかった。 これらの結果から、腹部臓器の腫瘍の切除術とリハを受ける患者では、手術前のHLの低下は手術後の経過に影響しない可能性が示された。よって、医療従事者は、手術と併せて手術前後のリハビリテーションが行われる際には、HLよりも手術前のフレイルや認知機能低下、併存症などへの対応を優先すべきと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響で患者リクルートが遅れたため、データ収集に時間が掛かったことが遅延の理由である。 ただし、現在はデータ収集は完了しており、論文投稿の段階に進んでいるため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究成果の一部を論文として投稿中であり、今後も論文公表という形を通して広く一般に研究成果を発信していく予定である。 加えて、手術後から退院までの身体活動の推移と身体機能やQOL、その他一般的な手術後のアウトカムとの関連についての検証を進め、手術後の身体活動をどの程度で保つことが有効であるかについても検証する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染流行に伴う患者リクルートの遅延により、データ収集の完了が遅れたため2021年度に学会発表や論文投稿に関わる費用の支出ができなかったため。2022年度には、論文投稿を開始しており、それに伴う英文校正費などの支出を予定している。
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