2022 Fiscal Year Research-status Report
植物と病原菌間における細胞間コミュニケーションの分子機構の解明
Project/Area Number |
19K24688
|
Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
田中 茂幸 摂南大学, 農学部, 講師 (30785481)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳本 玲 摂南大学, 農学部, 講師 (70595652)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 細胞外小胞 / エクソソーム / 活物寄生菌 / 植物病原菌 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020~2021年度では、トウモロコシに寄生する活物寄生菌であるトウモロコシ黒穂病菌を材料に、細胞外小胞の単離および内容物の解析(プロテオーム解析・RNA-seq)を行ってきた。ILP1はこれら解析により同定した、細胞外小胞膜上に存在すると考えられる膜タンパク質である。ILP1欠損株から精製した細胞外小胞は、植物細胞膜融合能に低下がみられ、細胞外小胞と植物細胞膜どうしの融合を促進する分子であると期待された。そこで、2022年度では、ILP1についてさらに解析を行った。 ILP1はC末端が膜貫通領域となっており、その他の領域は球状のβプロペラ構造をとる。この構造が、実際に細胞外小胞の外側に露出していることをドットブロット法で確認した。また、免疫染色により、ILP1はトウモロコシ黒穂病菌の伸長菌糸細胞内で顆粒状に局在することを確認した。このことは、ILP1が細胞外小胞のマーカータンパク質として今後利用できることを示している。 ILP1と結合する植物分子を同定するため、ILP1-HAを発現するトウモロコシ黒穂病菌を作出し、植物に接種した。感染葉からタンパク質を抽出して、ILP1-HAの免疫沈降実験を行った。免疫沈降物についてプロテオーム解析を行い、ILP1との結合が期待される植物タンパク質リストを得た。しかし、このリストの中には、植物細胞膜上に存在することが期待されるタンパク質は含まれていなかった。プロテオーム解析の結果を見ると、ILP1のペプチドカウント数が想定よりも少なかった。このことから、ILP1の免疫沈降効率が十分でなかった可能性があり、今後条件の検討が必要であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目標では、最終年度までに行う内容は、ILP1の同定と破壊株の性状解析であったため、ILP1と相互作用する植物分子の同定まで踏み込んで研究を進めることができたのは、順調な進展があったと考えている。しかし、プロテオーム解析で得られたデータを見ると、期待していた分子を見つけることができなかった。そのため今後の実験計画では、実験条件を再検討し、再び共免疫沈降実験を行う予定をしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ILP1と結合する植物分子の同定を最優先事項としている。膜タンパク質の抽出に適したプロトコールで共免疫沈降実験を行い、より信頼性の高い候補タンパク質リストを得る。 また、細胞外小胞がどのように細胞から分泌されているのかは謎に包まれている。トウモロコシ黒穂病菌は真菌であるため、細胞は細胞壁に包まれており、細胞外小胞がどうやって細胞壁を通過するかはいまだ不明である。この点を明らかにすべく、ILP1をマーカーとして超解像顕微鏡を用いたライブセルイメージングを行い、細胞外小胞の動態を明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
本研究が開始した2020年は、コロナ初年度であり、当初予定していた博士研究員を雇用した研究推進が思うように行えなかった。次年度からは、実験補助員を増員することで円滑な研究活動が行えるよう対応したが、計上していた人件費についてその分差異が生じた。
|
Research Products
(7 results)