2020 Fiscal Year Research-status Report
Computational somatic medicine based on predictive coding: A basic study on Irritable Bowel Syndrome
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19KK0062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片平 健太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60569218)
木村 健太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40589272)
遠山 朝子 名古屋大学, 情報学研究科, 研究員 (10816549)
齋藤 菜月 名古屋大学, 情報学研究科, 研究員 (60844834)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | 生理 / 計算論的心身医学 / 過敏性腸症候群 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
予測的符号化の原理は、脳は内的モデルを構成して感覚信号を予測し、それにより視覚や聴覚などの知覚経験を創発していると主張する。近年、この理論は身体内部の知覚である内受容感覚にも拡張され、脳と身体の機能疾患である心身症の理解に重要な示唆を与えている。本研究は、代表的な心身症である過敏性腸症候群(IBS)を対象としてこの理論を実証的に検討し、計算論的心身医学ともいうべき研究と臨床実践の新しい領域を拓くための基礎研究を志向している。豊富な過敏性腸症候群の研究経験と患者のデータ・ベースを持つクロアチアのリエカ大学と共同し、同疾患患者と健常者を参加者とし意思決定課題を用いた実験研究を行う。その結果から、彼らの内的モデルの柔軟さを評価できる計算論モデルを作成し、過敏性腸症候群をはじめとする心身症の背後に脳の内的モデルの不全があるという仮説を検証する。 昨年度の予備実験の結果に基づいて作成した意思決定課題と計算論モデルを用い、今年度はクロアチアにおいてIBS患者群80名、これとマッチングした健常統制群80名のデータを収集した。今年度当初より発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、黒ロアチアの大学や病院も閉鎖され研究に多大な影響を受けたが、クロアチアの研究者の尽力により予定したデータ収集を完了することができた。これらのデータは、日本・クロアチアの研究者間で共有済であり、共同でデータの確認とクリーニングの作業を行った。現在、計算論モデルを適用して各種のパラメータ推定を行い、各種の認知課題の成績、性格特性、デモグラフィック要因などとの関連を探索している。 一方で、本研究の目的の1つである両国の研究交流の促進については、新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた相互の訪問が不可能になった。これについては、2021年度において、オンラインでの共同セミナーの開催などを計画していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度初頭よりの新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、本研究は多大な影響を被った。日本とクロアチアで研究交流を行う予定であったが、中止を余儀なくされた。また、日本でもクロアチアでも感染拡大により大学の閉鎖や、特にヒトを対象とした実験研究の停止など、研究の遂行に多大な支障が生じた。 それにも関わらず、クロアチアの研究者の努力により、本年度に遂行する予定であった研究1に関して、IBS患者群と健常統制群について、予定していたサンプルサイズでのデータ収集を完了することができた。これは、この困難な時期としては、望みうる最大の成果であると言うことができる。このデータ・セットは日本の研究者にも共有済であり、現在解析に向けて整理・確認を行っている。2021年度の早い時期に解析結果を出すことができる見込みであり、全体として本研究は予定どおりおおむね順調に進展していると評価することができる。 2020年度に不可能になった両国の研究交流に関しては、2021年度も引き続き渡航が困難な状況が続く見通しであることから、オンラインでの交流を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、下記のように研究を進行する。1)2020年度に得られた研究1のデータ解析を進め、IBS群と健常統制群を比較し、IBS群における意思決定や内受容感覚などの特性を抽出する。2)IBSには、異なる病状や病因に基づくサブ・グループがあると考えられている。2020年度の研究で得られた行動、心理、生理、医学的データから、クラスター分析などの手法を用いて、そうしたサブ・グループを抽出できるかを検討する。それらのサブ・グループごとに意思決定や内受容感覚における特性を比較検討する。3)文化比較検討のため、同様な意思決定課題を用いて日本人80名を対象にデータ収集を行う。4)オンラインでの共同セミナーを複数回開催して、2020年度研究の解析結果の検討とその解釈、今後の研究の推進に関する議論を行う。また、相互の研究の紹介や交流を行う。今後、新型コロナウイルス感染症の影響が収束したならば、研究代表者がクロアチアを訪問し、プロジェクトの推進と今後の研究協力体制についての協議を行う。
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Causes of Carryover |
本研究は、日本とクロアチアにおいて共同で実験研究を推進し、それを契機として両国の研究交流を促進して中長期にわたる研究協力関係を構築することを目指している。これを実現するために、今年度、両国の研究者が相互に訪問して研究の共同検討会、公開のシンポジウムやセミナーを開催することを予定していた。ところが、今年度初頭から新型コロナウイルス感染症のパンデミックが生じ、渡航が不可能になった。このため、相互に訪問しての交流は延期せざるを得なくなった。このための費用を2021年度以降に持ち越し、感染症が終息して渡航が可能になった後に交流事業を行うこととする。 一方、クロアチアでの実験研究は最小限の予算で予定どおり進行している。日本での実験研究は、やはり感染症の影響で遅延したが、2021年度以降に推進し、ここで予算を使用する。
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[Presentation] Effects of increased interoceptive awareness on postpartum depression and emotional states: An experience sampling study using smartphone photoplethysmography.2020
Author(s)
Suga, A., Naruto, Y., Venie Viktoria Rondang Maulina, Uraguchi, M., Sasaki, T., Ozaki, Y., & Ohira, H.
Organizer
2020 Annual conference of the Society for Affective Science
Int'l Joint Research
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