2022 Fiscal Year Research-status Report
Computational somatic medicine based on predictive coding: A basic study on Irritable Bowel Syndrome
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19KK0062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片平 健太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60569218)
木村 健太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (40589272)
遠山 朝子 専修大学, 文学研究科, 特別研究員 (10816549)
齋藤 菜月 名古屋大学, 情報学研究科, 研究員 (60844834)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | 生理 / 計算論的心身医学 / 過敏性腸症候群 / 意思決定 / 予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
(2021年度まで)クロアチアにおいて過敏性腸症候(IBS)群の患者93名、統制群としての健常者74名を対象とし、意思決定を評価する確率的学習課題、認知課題(n-back課題、注意課題、記憶課題など)、性格特性(ビッグ5、うつ、不安など)を測定する心理尺度への評定、を測定する実験を行い、データ収集を完了した。 (2022年度)日本側で、意思決定課題を、強化学習モデルを利用した計算論モデルにより解析し、学習率、逆温度、固執性、忘却などのパラメータを個人ごとに推定して両群を比較した。その結果、IBS患者群では、報酬を得られた場合、損失を回避できた場合に、次の試行でも同じ選択肢を選択する確率がより高く、報酬への感受性の高さが示唆された。強化学習モデルによる解析でも、IBS患者群では統制群に比べて逆温度の値がより大きいという、行動傾向と整合的な結果が得られた。クロアチア側では、認知課題と性格特性に関するデータ解析を行った。その結果、基本的な認知機能についてはIBS患者群と統制群の間に差はないが、情動ストループ課題においてIBS患者群の方が統制群より反応時間が早く、課題遂行も正確であることが明らかになった。また、身体内部の知覚である内受容感覚が、IBS患者群の方が正確であることが示された。 日本とクロアチアで、オンライン会議と対面での会議(2023年3月)において共同で検討した。その結果、IBSに罹患した結果身体内部の感覚が鋭敏になり、それが認知や行動の精度を上げているという仮説を考えた。今後、この仮説を、測定した変数の多変量解析により検討することを決定した。
新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、本研究の目的の1つである研究交流が制約を受けていたが、パンデミックが収束し渡航制限が緩和されたことに伴い、研究代表者・大平が2023年3月にクロアチア・リエカ大学を訪問し研究交流を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始後3年にわたって続いた新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、研究の中断など影響が大であったが、それにも関わらずクロアチア側の研究者の尽力により患者を含む大規模な実験を遂行し、有効なサンプルを得ることができた。2021年度までに、データを日本側の知識、技能により解析し、特に強化学習モデルを用いた計算論的な解析により興味深い知見を得ることができた。2022年度には、これらの成果をクロアチア側で解析した心理行動的変数と関連づける試みを行い、有益な知見を得つつある。 新型コロナウイルス感染症のため、本研究の目的の1つであった相互に研究訪問を行い交流を深めることが全くできなくなったことは残念であった。しかしオンライン会議などを通じて可能な範囲での交流を図るよう努力した。2022年度後半には、パンデミックが収束し渡航制限が緩和されたことに伴い、研究代表者・大平がクロアチアを訪問し研究交流を再開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、患者群と統制群について、測定した全ての心理、行動、生理的変数を連結したデータ・セットを完成する。これに基づいて、クロアチアと日本の研究者が議論しつつ共同してデータ解析を行う。そこで得られた知見を総合的に解釈し、論文として公刊するための準備を行う。ここまでが順調に進行すれば、年度内に論文の投稿を目指す。 2023年秋ころに、日本側の研究者(研究代表者及び研究分担者)がクロアチアを訪問し、共同シンポジウムやワークショップの開催、研究室訪問などの研究交流を行う。これに基づき。日本とクロアチアの長期にわたる研究連携体制の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のため、2021年度まで海外渡航ができなくなった。これにより、本研究で計画していた日本とクロアチアの研究者が相互に訪問し研究交流を行う事業が実行できなくなった。新型コロナウイルス感染症による渡航制限が緩和されたことに伴い、2023年3月に研究代表者・大平がクロアチア・リエカ大学を訪問した。この際、2023年度には複数の日本の研究者がリエカ大学を訪問して滞在し、交流事業を実施することで合意した。次年度使用額はそのための旅費として使用する。
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