2021 Fiscal Year Research-status Report
野生由来マカク類のサルマラリアの網羅的解析と宿主特異性を規程する宿主因子の探索
Project/Area Number |
19KK0205
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 宗裕 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70177096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桂 有加子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (00624727)
川合 覚 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70275733)
案浦 健 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (90407239)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | サルマラリア / カニクイザル / 野生由来 / タイ国立霊長類センター / ナノポアシーケンサー / 媒介蚊 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルマラリアは、東南アジアのマカク類を中心に30種ほどが報告されている。1960年代の実験室内の偶発事故やボランティアへの感染実験から10種ほどがヒトへも感染するとされているが、野生マカク類のサルマラリアに関する情報は極めて限られている。本研究は、タイの野生由来マカク類に寄生しているサルマラリア原虫を網羅的に調べ感染状況を把握するとともに、それらを分離・凍結保存すること、各サルマラリア原虫の媒介蚊の種を特定すること、宿主特異性を規定する宿主側の遺伝的要因を特定することを目的としている。さらに本研究を通して、我が国の研究者がマラリアに限らず医学・薬学分野のサル類を用いた共同研究を、同霊長類センターにおいて実施できる研究環境を構築する。 2021年度は、新型コロナウイルスの影響で、タイでの調査およびタイ国立霊長類センターに保存しているサンプルの分析は実施できなかった。そこで、国内で解析法等について検討した。 ナノポアシーケンサーを用いたフィールドでのサルマラリアの同定は、PCRを併用した方法を想定している。近年、東海大学の中川らが「ナノポアシーケンサーを活用した感染症細菌叢ゲノムの迅速解析法」を確立した。この方法は、PCRを用いていること、PCR産物のサイズが比較的小さいこと、フィールドで実施できることから、サルマラリアの同定に応用できると考えられた。そこで、中川博士の協力のもと、保存しているサルマラリアとヒトマラリアのDNAをもちい、ナノポアシーケンシングによるサルマラリア同定法を検討した。 また、案浦らが維持しているサルマラリア原虫をもちいて、捕獲した媒介蚊からのマラリアの分離法・同定法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度のに購入したMinION・MinITのセットアップをおこなったところ、コントロールサンプルを用いたシーケンスは実施できたが、使用を予定していたノートPCではリアルタイムでのモニタリングが実施できないことが判明した。そこで、2020年度は、MacBook Proを購入し、再度セットアップをおこなった。また、実際にサルマラリアのDNAを用いて、種同定を試みた。 2020年度の計画では、岡本・桂は、早い時期にタイ国立霊長類センターを訪問し保存サンプルをナノポアシーケンサーで分析すると共に、健康診断時に新たなサンプルを採取する予定であった。また、川合・案浦は近隣のマラリア流行地で蚊の採集を行い、感染しているマラリアの種を確定するとともに培養をおこなう予定であった。しかし、新型コロナウイルスの流行により、タイへの渡航が困難であったことから、サンプルの分析や新規サンプルの採取は実施できなかった。 2021年度は、2020年度に実施できなかった保存サンプルの分析を実施施し、その結果を踏まえて、再度健康診断時にサンプリングを行う予定だった。しかし、年度の前半は新型コロナウイルスの影響で調査の計画が立てられず、流行が落ち着いた11月・12月に2月に調査を実施する計画を立てたが、その後再度の感染増があり、タイでの分析・サンプリングは実施できなかった。 本研究計画は、タイで採取したサンプルの現地での解析を目的としたものであり、タイでの調査2年間全く実施できていないため、研究計画は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も年度当初は、タイ訪問が難しいため、日本国内においてナノポアシーケンサーのセットアップをおこない、PCR産物を用いて複数のマラリア種を識別できる方法を確立する。PCR産物を用いた解析系が確立したら、ナノポアシーケンサーの特徴を活かしたロングリード法による、マラリアDNAの検査系を検討する。研究分担者の川合・案浦は、タイにおいて、サルマラリアの培養・蚊からのサンプリングを計画しているため、他の研究課題等でマラリアを感染させたサル類や蚊を用いて実験系を確立する。 2022年度後半は、タイへの出張が可能とる可能性が高いと考えられる。その場合、出来るだけ早い時期にタイ国立霊長類センターを訪問し、実験を再開する。2019年度に保存した血液を用いて、ノポアシーケンサーによる実際の調査を実施する。研究代表者、研究分担者の滞在期間重複させながら、ある程度長期の実験を実施する。その際、2022年度に実施予定の健康診断の時期に合わせる用に滞在期間を調整し、追加のサンプルを採取する。また、2019年度に選定した調査地で、媒介蚊の採集を行う。
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Causes of Carryover |
本研究計画は、タイの野生由来マカク類のマラリア調査を現地で行うことが目的であり、タイでのサンプリング・解析が必要である。しかし、2020年度、2021年度にタイを訪問し、保存サンプルをナノポアシーケンサーで分析すると共に、サル血液の採取・保存と媒介蚊の採集・同定を行う予定であったが、新型コロナウイルス流行のため、中止となった。2022年度に渡航が可能となった場合、できるだけ早期に渡航し、実験を再開する。 2022年度も渡航が困難な場合、研究分担者らが保存しているマラリアのDNAと、現在別のプロジェクトで実施しているアカゲザル、リスザル、コモンマーモセットへの感染実験のサンプルを利用して、より簡便で確実な主義を確立する。しかし、最終的にはタイでのサンプリング・解析が必須であるため、状況によっては1年間の計画延長を検討する
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Research Products
(1 results)