2023 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯泥炭地域の森林火災発生メカニズム解明と生態系リスク・ マネジメントの共創
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19KK0268
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉野 邦彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (60182804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 教授 (30376941)
御田 成顕 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70800655)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | 熱帯泥炭地域 / 森林火災 / 炭素収支 / 生態系リスク評価 / 生態系リスクマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究対象地であるインドネシア、スマトラ島リアウ州のRupat島の森林火災頻発地域の現地土壌からのCO2放出速度観測、現地ヒアリング調査と森林樹木材積計算アルゴリズム開発を行い、現地調査・観測、データ解析の結果、以下の結果を得た。 1)泥炭林の火災により泥炭土壌面から放出量されるCO2は、既往研究で報告される量と同等であり、鎮火後も数カ月間に渡り大量のCO2を放出し続ける。2)単一樹木の多視点ステレオ写真から算出した3D Point cloud modelから算出したアロメトリー式で材積量を推定したところ、既存式と同程度の精度で推定できる。3)複数の村落行政の長と消防担当者へのヒアリング調査から、村落毎に火災防止対策や消防体制が異なっていること、十分な初期消火体制も組織されておらず、消防団人員と機材の拡充を促す制度構築ならびに他の消防組織との連携が重要であることが分った。 全体結果として、1)同島の火災発生確率は従前土地利用、エルニーニョの発生有無と火災防止政策に依存すること、火災発生数は植林地、森林伐採跡地、乾陸湿地林、マングローブ林、二次林、プランテーション、農地の順に低下し、特に乾燥気味の水文環境である海岸から離れた箇所での火災が多い、2)火災後の泥炭地表面からのCO2放出量は火災により土壌の通気性の改善のため火災が起きていない他の土地利用からの量より多い。2)同島内の森林火災防止政策遂行上、防止策や消火制度改善のための経費上の問題があることが現地調査・観測結果として纏められる。 以上の結果を踏まえて、当島の森林火災による生態系リスクを土地利用毎の火災発生確率と文献から得た各土地利用の経済価値から推定して評価すると、植林地、農地、マングローブ林、プランテーションの順にリスクが低下しており、この順に生態系リスクマネジメントを実施するべきと結論付けられた。
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