2019 Fiscal Year Research-status Report
Sustainable forest resource management from the phenological views (mass flowering events) in the tropical rain forest
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19KK0269
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
奥田 敏統 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (20214059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金尾 太輔 沖縄科学技術大学院大学, 進化ゲノミクスユニット, 研究員 (40758421)
山田 俊弘 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (50316189)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 一斉開花 / 一斉結実 / 熱帯雨林 / 森林管理 / 気候変動 / 林冠計測 / 生物季節学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東南アジアの熱帯地域で2~5年の周期で発生する樹木の一斉開花現象に焦点をあて、森林資源を持続的に利用する上で本現象が有する生態学的意義を明らかにすることを目的とする。具体的には、ドローンを用いて一斉開花・結実を観測し、過去の一斉開花や、広域規模での一斉開花の定量評価ができる技術を開発する。同時に地元や国際研究機関と共同でフェノロジーの観測データを共有し、エルニーニョなどの気象・気候変動と関連性について分析ができる国際観測ネットワークを構築することを目標とする。 本年度(2019年度)では、まず、ドローンを用いた熱帯林の林冠撮影がどの程度可能かを検証した。調査対象としたのは、一斉開花現象のデータや森林構造や生物多様性のデータが集積されているマレーシア半島部のパソ保護林とした。調査の第一段階として、小型マルチスペクトルセンサーをドローンに搭載し、林冠面での森林の状態の判読をおこなった。2019年前半から中規模ながら調査地において一斉開花が始まったため、早速ドローン空撮による開花・結実個体の判読の可能性について調査を実施した。さらに、ドローンを用いた空撮によって得らえたデータと、LiDAR(Light Detection and Ranging)や衛星画像との整合性を精査するため、既存のデータ収集、整備をおこなった。次に植生分類や森林構造の視点から、データ間の補完性やオーバーラップをする方法について解析を開始した。 さらに、一斉開花・結実に関する研究者間でのネットワーク構築を図るため、マレーシア工科大学、マレーシア森林研究所の研究者と合同で、ワークショップおよび調査地での現地検討会を複数回開催した。また国内においても動物生態学および動植物の相互作用の視点から、今後の研究の進め方について検討会を開催し、今後の研究計画について道筋をつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症の世界的な広がりにより、2020年の1月から予定していたマレーシアへの出張を中止せざるを得ない状況となった。そのため現地でのドローン空撮による林冠の連続変化を追うためのデータ収集に支障が出ている。同様に現地(マレーシア)の研究者との国際会議なども予定していたが、すべて中止となったため、当初予定していた、研究者交流とネットワーク構築にやや遅れが出ていることは否定できない。 とはいえ、2019年度にマレーシア半島部などで顕在化した一斉開花、一斉結実現象に遭遇することができ、この間の調査地での開花結実に伴う、林冠面での反射スペクトルデータの変化などを抽出することができた。さらに、ドローンによる精緻なデータと、小縮尺の衛星画像との整合性を分析するための作業もマレーシア工科大学の研究者と進めている。 さらに、シンガポールにあるスミソニアン熱帯研究所の研究員を招聘し、セミナーを開催した。当該分野でのマレーシア以外の研究者との協力について進展が見られた。またマレーシア工科大学やマレーシア森林研究所との研究者とも複数回にわたり、現地でのドローンを用いた空撮や森林調査、セミナーなどを開催しており、点と点の繋がりではあるが、フェノロジー観測に関する研究者間のネットワーク構築に道筋をつけることができた。 一斉開花、一斉結実に関連する生物活動は地上50~60mもの林冠層で営まれるため、様々な角度から研究資源の投入が必要である。そのため、本課題では一斉開花・結実に関する評価手法の開発もさることながら、研究者交流のレベルアップにも重きを置いている。上記の点から、やや遅れは生じているが、課題が開始された10月以降の半年間に予定していた計画は概ね実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はドローンを用いた森林の林冠面での状態把握(開花、結実)を重点的に実施したが、今年度(2020年度)は、一斉開花・結実現象が動物の動態への影響や花粉媒介者としての動物の役割についても、調査開始する予定である。また、森林構成種の一斉結実および種子生産を考慮に入れた森林管理モデル構築についても着手する予定である。これらのツール開発をしながら、当該分野の研究者との交流を図りフェノロジー観測のネットワーク構築を推進する。具体的には以下の項目を実施する。 1. 植物の反射スペクトルの多様性を利用して、一斉開花を含めた林冠樹木の時空間変動が抽出できる手法開発を行う。衛星画像データや他地域の森林データに外挿することで、一斉開花現象から見た森林の更新能力を評価するモデルを開発する。 2. 森林や周辺域の多点に花粉媒介者(pollinator)トラップを設置し、主たるPollinatorの花粉媒介能力について調査・分析を行う。 3. Pollinatorの個体密度や時空間的な変動が森林の更新にどのような影響を及ぼすかについて、樹木の個体動体からの評価モデル開発をおこない、従来の森林の施業管理に関して択伐サイクルや伐期サイズなどの基準について検証を行う。モデルには調査地で継続的に取得されている大規模面積調査区の毎木データ(樹木の個体マップ)をも利用する。 4. 熱帯林のフェノロジー観測に関するワークショップを開催し、マレーシア半島部を中心とするネットワーク構築のため体制を整える。マレーシアおよび、日本側でワークショップ、シンポジウムを少なくとも1回ずつ開催する。
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Causes of Carryover |
感染症(COVIT-19)の広がりにより当初予定していた海外出張をともなう現地調査が実施できなかった。それにより旅費やそれにともない発生する滞在費、車借り上げ代、燃料などの費用執行ができなかった。これら未執行分によって生じる未調査については、次年度の出張回数や滞在日数を増やすことで十分、補償できる。
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[Journal Article] The Forest Observation System, building a global reference dataset for remote sensing of forest biomass2019
Author(s)
Schepaschenko D, (代表者), Chave J, Phillips OL, Lewis SL, Davies SJ, Rejou-Mechain M, Sist P, Scipal K, Perger C, Herault, B, Labriere N, Hofhansl F, Affum-Baffoe K, Aleinikov A, Alonso A, Aman C, Araujo-Murakami A, Armston J, Arroyo L, Okuda T (共同研究者他64名)
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Journal Title
Scientific report
Volume: 6
Pages: 198,208
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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