2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19KK0358
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
志賀 拓也 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00375411)
|
Project Period (FY) |
2020 – 2022
|
Keywords | 双安定性錯体 / プロトン / スピンクロスオーバー / 低次元錯体 / 多座配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、双安定金属錯体をもちいたプロトン-電子連動物性を示す機能性材料を開発し、従来にない新しいメカニズムに基づく磁気電気効果や光誘起物性変換を達成し、さらに界面上・複合デバイス内での挙動を調べることで、単一分子のもつ光学特性・磁性・誘電性をナノレベルのデバイスやエネルギー変換材料へと応用する技術基盤を形成することを最終目標としている。本研究課題の全研究期間を通して、以下の3つの研究展開を行う予定である。 (1)応力・電場応答性を示す双安定性材料の構築 (2)プロトン応答性双安定性錯体の基板界面への担持と単一分子スイッチング (3)プロトン応答性双安定性錯体をもちいた全固体電池の開発 令和2年度は、まず、これまでに合成に成功している解離性プロトンをもつ多座配位子をもちいた5種の鉄単核錯体を、デバイス化実験に向けて大量に合成し、溶液中での安定性について詳しく調べた。国際共同研究では基板上での単分子物性の測定と複合デバイスの構築を行うため、十分な量の錯体が必要となるため、本年度は原料となる化合物合成に注力した。さらに、基板への担持を効果的に行うには、様々な置換基の導入が必要となると考えられるため、解離性プロトン部位を利用した長鎖アルキル基の導入検討を行った。非対称配位子においては、異なる長さの炭素鎖をもつアルキル基の導入に成功し、鉄単核錯体の単離および単結晶X線構造解析による構造決定に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響で、渡航禁止の状態であり、現地での研究活動を行うことができていないが、研究対象であるプロトンー電子連動物性を示す機能性材料の原料となる錯体合成と、分子修飾した類似化合物の合成に着手しており、デバイス化に向けた基礎的データの収集を行っている。化合物の同定に関して、単結晶構造解析を行う必要があり、所属研究室所有の装置の管理費として、本研究経費を使用した。海外共同研究者であるNottingham大学のGrahamNewton博士との共同研究を進めるためのディスカッションに関しては、メール等を使って十分に連絡をとっており、共著の論文に関しても打合せをしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた錯体の固体物性と溶液物性を詳しく調べ、デバイス化に向けた研究計画を立てる。特に、酸塩基応答性に関して詳しく調べ、基板に担持したときの測定手法に関してもAFM,TEMなどをもちいて検討を行う。必要があれば、様々な置換基をもつ類似錯体の合成も行い、幅広い応用ができるように準備をしておく。
|