2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20001004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北岡 良雄 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (70110707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 和正 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (90109265)
木村 剛 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (80323525)
大貫 惇睦 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40118659)
木須 孝幸 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 准教授 (20391930)
伊豫 彰 産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (50356523)
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Keywords | 強相関電子物質 / 高温超伝導と反強磁性の共存 / 鉄砒素系新高温超伝導体 / 新超伝導物質 / 価数の揺らぎ現象 / 磁気秩序誘起強誘電体 / NMR/NQR / 物性理論 |
Research Abstract |
1.三層構造をもつBi系銅酸化物高温超伝導体単結晶の研究から、他の三層系に比べてT_cが低い原因は各銅酸素(CuO_2)面キャリア密度の不均衡のためであること、すべてのCuO_2層を最適キャリア密度にすることによって最大150Kまで上昇する可能性があることを示唆した。また、三層頂点フッ素系では、反強磁性と超伝導が共存する臨界キャリア濃度が7%であることを発見し、この臨界濃度は層数の減少とともに低下することを見出した(北岡)。これらの結果は、高温伝導現象の普遍的な理解に導き、さらに新高温超伝導物質探索する指針となる意義をもつ。 2.伊豫らが発見したペロブスカイト型ブロック層を有する新鉄系超伝導体(Ca_4Al_2O_6)(Fe_2(AsP)_2)置換系では、キャリアは変化しないが、構造のみの変化によって、結晶構造の多様性とは関係なく、ノーダルギャップ超伝導相、反強磁性相、さらにフルギャップ超伝導相へと系統的に変化する全く新しい相変化を発見した(北岡、伊豫)。この結果は、現在、混沌としている新奇なFe系高温超伝導現象の解決の糸口となる意義をもつ。 3.重い電子系の典型物質CeCu_6を遙かに超える8J/(K^2・mol)の電子比熱係数を持つYbCo_2Zn_<20>において、磁場を立方晶の<111>に加えたとき、Yb化合物では、はじめての磁場誘起四極子秩序を発見した。また、反強磁性体CeIrSi_3の圧力誘起超伝導に関し、磁場誘起反強磁性相は、2.6GPaで完全に消失することを見出した(大貫)。これらの結果は、重い電子とその秩序化の研究に新たな舞台を提供する意義をもつ。 4.新たなマルチフェロイクス物質オリビン型Mn酸化物Mn_2GeO_4における電気磁気結合の起源を解明する上での鍵となる磁気構造を明らかにした(木村)。 5.臨界価数ゆらぎにより誘起される異方的超伝導状態の特異な不純物効果を明らかにした(三宅)。 6.Cr_<1/3>NbS_2というカイラル磁性体に対して磁場を印加することによりカイラル・ソリトン格子という新しい量子状態の観測に成功した(秋光)。 7.高輝度放射光X線回折実験では、超伝導および磁気転移に伴う原子配列の変化が、超格子反射や散漫散乱の変化として実際に検出されることを明らかにした(大隅)。レーザー励起超高分解能光電子分光装置の建設を行い、光源は本研究を遂行するに当たって十分な光源自然幅、強度を得ることに成功した(木須)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
発見以来25年経過してもなお混沌としていた高温超伝導現象の起源は「反強磁性秩序を生み出すものと同一のもの」,つまり反強磁性秩序を生み出す超交換相互作用に起因することを明らかにしたこと、Fe系新高温超伝導体は等方的なギャップを有するマルチギャップ符号反転S_±波モデルを用いてよく説明できることを示したこと、重い電子系における価数ゆらぎが拓く新しい物理現象を理論的に解明したことなど、多元環境下での新しい量子物質相の発見や現象を解明する成果を挙げることができ,研究は予想以上に進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で初めて、発見した反強磁性と高温超伝導の共存状態での両秩序相の相互結合状態に焦点を当て,電子構造,および構造物性等の多彩な観点から研究を深化させることを目的として,レーザー超高分解能光電子分光グループ,およびSPring-8の高輝度放射光を用いたX線回折実験グループを加えて,以下のような研究を推進する.(1)高温超伝導体の超低ドープ領域での反強磁性相と超伝導相図の確立,(2)超伝導状態での磁場誘起磁気秩序相の探索,(3)重い電子系の電荷ゆらぎに起因する超伝導現象の温度-圧力相図の確立,(4)新規な磁気秩序と強誘電相とが共存する新物質相の探索,(5)マルチフェロイックスにおける電気磁気相関効果の探索,(6)遷移金属化合物表面・界面における電界印加による電気磁気物性制御による新物質相の探索,(7)超多層系銅酸化物高温超伝導物質および多層系銅酸化物単結晶の創製,(8)新型Fe系高温超伝導体の創製などの研究を推進する.
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Research Products
(262 results)