2010 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光分光を応用した神経細胞の個体脳における同定と聴覚神経回路機構の研究
Project/Area Number |
20220008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大森 治紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (30126015)
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Keywords | パッチ電極 / 蛍光分光 / 聴覚 / 神経回路 / 蛍光タンパク / FRET |
Research Abstract |
H22年度は分光電気計測装置が稼働し研究目的の達成に向けて充分な成果を上げる事ができた。第1にFRETによる細胞内Ca信号の記録に成功した。これはF2Cという我々が以前に開発したCFP-YFP-Caセンサー蛋白をウイルスを用いて強制発現させた神経細胞に445nmレーザーを石英管パッチ電極を光導体として照射し470-600nm領域で蛍光スペクトルを観察する事で、KCI刺激による膜脱分極で生じた細胞内Ca応答をFRET観察したものである。Sindbis-virusに組み込んだF2C蛋白をトリ脳幹の聴覚神経核近傍に注入し、2日後にスライス標本を作製し蛍光蛋白を発現する神経細胞に石英管パッチ電極を接触させ蛍光分光を行った。KCI溶液投与により膜脱分極を起こし細胞内Ca濃度の増大に応じて、470-510nm領域のスペクトル強度が上昇し、520-600nm領域のスペクトル強度が減少し、さらにKCI溶液の除去により回復するFRET信号を検出した。電極を用いて計測したFRET応答は直後に蛍光顕微鏡を用いたW-ViewFRET光学系で同様に計測した応答と時間経過および強度の面で高い正の相関を示した。第2に本年度は分光スペクトルの計測と同時に蛍光の時系列計測を可能にするソフトウェアを開発した。これにより少なくとも数秒程度の時間分解で継続的に蛍光スペクトルを記録しつつ、特定の波長領域のスペクトル強度を積算し、背景スペクトル強度を差し引く事でFRETなとの蛍光スペクトル信号を時間軸上で計測表示する事が可能になった。電気刺激実験との対応を容易にする為に随時トリガー出力も可能である。なお、分光電気計測は、現状では脳切片内神経細胞を対象としているが、将来の応用を目的として並行して進めている聴覚神経回路機構の研究ではマウス個体の下丘から音の終了に応答する神経細胞を選んで解析する事ができ論文として準備中である。
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Research Products
(5 results)