2011 Fiscal Year Annual Research Report
不斉自己触媒反応における不斉の発生・増幅と伝播の研究
Project/Area Number |
20225002
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
そ合 憲三 東京理科大学, 理学部, 教授 (90147504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 常臣 東京理科大学, 総合研究機構, 講師 (40385513)
柴田 高範 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80265735)
新藤 斎 中央大学, 理工学部, 教授 (90245986)
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Keywords | 不斉自己触媒反応 / 不斉認識 / 不斉の起源 / ホモキラリティー / 不斉触媒 / キラリティー |
Research Abstract |
生体関連化合物には,L-アミノ酸のように一方の鏡像異性体が圧倒的に多く存在するものが多く知られており,その起源およびプロセスは,長年の謎とされてきた。本研究では,鏡像体過剰率が向上する不斉自己触媒反応の研究およびそれを用いて不斉の起源に関する研究を行った。 同位体置換により生じる分子キラリティーは,同位体元素の電子状態がほとんんど差がないので,きわめて微小であり,その認識はきわめて困難である。メソ型ヒドロベンゾインの一方の酸素原子を酸素18でラベルし,酸素16と酸素18同位体によるキラルなヒドロベンゾインを不斉合成した。これを不斉開始剤として用いて,不斉自己触媒反応を行ったところ,キラルな酸素同位体置換ヒドロベンゾインのキラリティーと相関したピリミジルアルカノールが高い鏡像体過剰率で再現性良く生成することを見出した。本結果は,酸素同位体置換によるキラル化合物が不斉誘導することを示す初めての例である。またアキラルなピリミジンカルバルデヒドが形成するアキラル結晶がエナンチオトピック面を有することに着目し,ジイソプロピル亜鉛を気相状態で一方のエナンチオトピック面に作用させたところ,エナンチオトピック面に相関したピリミジルアルカノールが高い鏡像体過剰率で得られることを明らかにした。さらにアキラルな2-テノイルグリシンのキラル結晶の絶対構造を単結晶X線構造解析により明らかにし,これを用いる不斉自己触媒反応を行った。また不斉自己触媒反応の構造を単結晶X線解析により推定した。アキラル核酸塩基シトシン一水和物の結晶水除去による不斉発生につき検討し,従来よりも低温で結晶水が除去されてキラル結晶が形成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸素16と酸素18同位体置換によるキラル化合物が不斉誘導を起こすことを不斉自己触媒反応を用いて見出すことができた。またアキラルな有機化合物が形成するアキラル結晶のエナンチオトピック面を用いて不斉炭素-炭素結合形成反応を行うことができた。さらにアキラルな核酸塩基シトシン一水和物から結晶水を除去することにより,キラリティーが制御されたキラル結晶に誘導することが出来た。査読付論文としてAngew.Chem.Int.Ed.誌に2報掲載し,解説およびアカウントを3報掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
アキラルな有機化合物のキラル結晶を用いる不斉自己触媒反応を行う。さらにアキラル結晶のエナンチオトピック面を用いる不斉自己触媒反応,アキラル結晶のキラル表面を不斉起源とする反応を推進する。またX線結晶解析により,不斉自己触媒の構造を推定する。さらに同位体置換による不斉有機化合物をキラル開始剤として用いる不斉自己触媒反応や,アキラルな結晶の脱水によるキラル結晶への変換に条件に付き検討する。
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Research Products
(41 results)