Research Abstract |
Mg^<2+>排出輸送体ACDP2に関しては,細胞質ドメインの構造解析により,細胞内ATP濃度に依存してMg^<2+>排出が制御される機構を示唆した.Na^+とCa^<2+>を対抗輸送するNCX輸送体に関しては,古細菌ホモログであるCaCAの結晶化に初めて成功し,5Å分解能のデータを収集している.温度センサーである,ヒト由来TRPV1のC末端のTRPドメインとカルモデュリンの複合体の結晶構造を2.0Å分解能で決定し,カルモデュリンがTRPV1のカチオン輸送をフィードバック輸送する機構を示唆した.また,酵母のTRPチャネルを酵母内で大量調製し可溶化することに成功し,結晶化を目指している.糖の輸送とリン酸化をカップルしたグループ輸送を行う糖輸送体PTSに関して,3.8Å分解能を持つ結晶の作成に成功し,構造解析を進めている.また,H^+あるいはNa^+と薬剤を対抗輸送し,様々な薬剤の排出に働く(ヒトでは腎臓や脳関門での異物排出に働く)MATEに関して,結晶化に成功し,2.4Å分解能のデータを収集した.現在,位相決定・構造決定を行っている.さらに,H^+とジペプチド・薬剤をsymportし,高等真核生物では小腸でのペプチドの吸収に働いているPOTに関して,1.99Å分解能での構造解析に成功した.現在,ジペプチドおよび各種薬剤との複合体の構造解析を進めている.さらに,低分子にとどまらず,細胞質中で合成されたタンパク質を,SecA ATPaseモーターに駆動されて,変性状態で細胞膜を輸送し,あるいは膜タンパク質を細胞膜に埋め込むSec膜透過因子の構造機能解析を精力的に進めた.本年度は,SecYEと協働するSecDFに関して,3.3Å分解能での結晶構造を解明した.生化学的解析により,SecDFは,SecAが変性したタンパク質をSecYEに押し込んだ後の,タンパク質膜透過後期過程を,プロトンの濃度勾配のエネルギーを用いて促進する機能を持つことを明らかにした.さらに,システインクロスリンクにより,SecDFの第一ペリプラズムドメインが2つの構造をダイナミックに往復することで,タンパク質をSecYEチャネルから引きずり出すことを明らかにした.さらに,パッチクランプ解析と蛍光分光解析により,SecDFがプロトンを輸送し,これを駆動力としてタンパク質の膜輸送を促進するシャペロンとして働くことを実証し,さらに,プロトン輸送に働くアミノ酸残基を同定することに成功した.
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