2011 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系細胞の免疫応答に着目した腸肝軸多段階免疫バリアーシステムの研究
Project/Area Number |
20228005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾崎 博 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30134505)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 正敏 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70211547)
佐藤 晃一 山口大学, 獣医学部, 教授 (90205914)
鳥橋 茂子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90112961)
百溪 英一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所, 上席研究員 (50355145)
|
Keywords | 腸肝軸 / 間葉系細胞 / 免疫応答 / 炎症反応 / 平滑筋細胞 / 筋線維芽細胞 / ES細胞 / 内皮細胞 |
Research Abstract |
本研究は、両臓器に分布する間葉系細胞群が免疫細胞との共同作業によって生体防御機構に積極的に関わることを証明することを目的としている。本年度(2011年)は、9報の原著論文を公表したが、ここでは以下の3点について概説する。 (1)間葉系細胞炎症応答におけるプロスタグランジンの役割:炎症応答によって産生されるPGE2およびPGD2の役割について、検討を行った。腸間膜動脈平滑筋においてPGE2はEP3受容体を介して収縮性を高め、これにはPKCとROCKの活性化が関与することを明らかにした(Eur J Pharmacol. 2011)。さらにPGD2に関しては、DP受容体を介して肝筋線維芽細胞の収縮性を減弱させること(J Pharmacol Sci 2011)、またDP受容体を介してがんに伴う血管新生を抑制すること(PNAS 2011)を明らかにした。(2)炎症に伴う筋線維芽細胞の筋分化応答:肝臓線維化に伴う肝星細胞の炎症応答を、収縮タンパク質の変化に着目して実施した。Ca依存性機序とCa非依存性機序を分けて解析し、MLCK、MYPT1、CPI17等の収縮関連タンパク質を、タンパク質レベルならびにmRNAレベルで上昇していること、これに呼応して収縮性も上昇していることも明らかにした(Am J Physiol 2011)。(3)炎症に伴う筋線維芽細胞のプリン受容体応答:細胞障害のデンジャーシグナルとしてATPやUDPを初めとする細胞内ヌクレオチドは極めて重要な因子として考えられている。腸筋線維芽細胞において、細胞障害時に放出されるヌクレオチドとしてUDPが主要なヌクレオチドであること、さらにUDPがP2Y6受容体を介して遊走活性を増加させることを明らかにした(Eur J Pharmacol 2011)。以上、腸および肝における間葉系細胞の炎症応答の一端を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度研究成果として、原著論文9報を公表した。23年度に受けた前年度中間評価は「A」で、評価書に記載されたコメントは以下の通りである。「本研究は消化管と肝臓が連携して生態防御に当たる腸肝軸における間葉系細胞群の免疫機構への関与を解明することが目的である。これまでの成果は、34編の論文にまとめ、平滑筋細胞、筋線維芽細胞、血管内皮細胞、免疫細胞などに関する研究成果を含め、インパクトファクターの合計が103.625である、その他総説が5編および国際学会に9編を公開している。特に、研究代表者は着実に成果を挙げている。」
|
Strategy for Future Research Activity |
H24年12月よりテネンシンC(TC)欠損マウスを用いて腸炎モデルを作製し、腸炎でのTCの役割と腸筋線維芽細胞(IEMF細胞)の機能解析を行う予定であったが、C57BL/6JマウスをストレインとするTC欠損マウスでは、腸炎発症に影響が出ずに、Balb/CマウスをストレインとするTC欠損マウスで有意な表現形の差がでることが予備実験で判明した。その結果、急遽、Balb/CマウスをストレインとするTC欠損マウスの繁殖に着手しなくてはならなくなった。従って、H24年12月より同マウスの繁殖を開始した。また、併せて、C57BL/6JをストレインとするTC欠損マウスにおいても、しっかりとした定量病態解析を実施するため、腸炎解析は当初の2ヶ月から3ヶ月間に解析期間を延長することとした。(繰り越し申請) 現在、この問題は解決し、5年間の研究を終了しようとしている。終了後に、間葉系細胞の炎症応答に関わる総説を執筆したい。
|
Research Products
(32 results)