2010 Fiscal Year Annual Research Report
東国地域及び東アジア諸国における前近代文書等の形態・料紙に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20242016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 隆志 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50191416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯山 賢一 独立行政法人国立文化財機構, 奈良国立博物館, 館長 (00300690)
林 譲 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00164971)
柳原 敏昭 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30230270)
橋本 雄 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50416559)
小島 浩之 東京大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (70334224)
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Keywords | 楮紙 / 雁斐紙 / 三椏紙 / 芭蕉紙 / 色部文書 / 竪切紙 / 上江洲家文書 / 願文 |
Research Abstract |
平成22年度の研究の主な成果は以下の通りである。(1)東国文書のうち、新潟県立博物館所蔵色部文書について、全230点の形態・紙質の調査を終えて、データ・ベース化した。戦国期の書状では、楮紙が多いが、斐紙や三極紙も見える。また書状の形態では通常の切紙のほか、竪切紙の横内折が従来の指摘よりも多いことがわかった。さらに顕微鏡調査により漉き返し紙が多いことも判明したが、このことは文書紙の再利用が予想以上に行われていたことを想定させる。このデータは山本隆志研究室ホームページで公表する。(2)高知県紙産業技術センターでは、漉きあげた楮紙を重ねて杵で叩き、打紙を作成した。打紙を打つのに、重ねる紙は200枚ほどで、約4時間が必要であることがわかった。(3)沖縄県久米島自然文化センターに寄託されている上江洲家文書のうち、約200点の文書につき紙質・形態の調査を実施した。調査した文書は江戸後期から明治初期の地方文書であるが、紙質は楮紙が多く、芭蕉紙や竹紙も見られた。上江洲家は琉球王朝の久米島地方官であるが、文書内容は那覇への上申書案や占・願文に関係するものが多く、簡単な内容の文書は芭蕉紙を用いて、清書には竹紙を用いている傾向がうかがわれる。紙質のうち芭蕉紙は琉球で作成されたものであるが、なかには久米島で作成されたものあると考えられる。また竹紙は中国で作成されたものであり、楮紙の存在を考慮すると、久米島の上江洲家文書には日本・琉球・中国からの紙が料紙に用いられていることが大筋として明らかとなった。
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Research Products
(16 results)