2008 Fiscal Year Annual Research Report
植物乳液中に含まれる耐虫防御タンパク質・物質の耐虫性発現分子機構解明と応用
Project/Area Number |
20248007
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
今野 浩太郎 National Institute of Agrobiological Sciences, 昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (00355744)
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Keywords | 植物乳液 / 耐虫性タンパク質 / クワ / イチジク属植物 / アルカロイド / プロテアーゼ / 植物-昆虫間相互作用 / MLX56 |
Research Abstract |
クワ乳液から精製・構造決定・クローニングしたMLX56タンパク質の作用・効果を検討するため、mlx56を用いてシロイヌナズナの形質変換体の作製を試みた。アグロバクテリウムと大腸菌のシャトルベクターpBI-OX-GWにmlx56を導入したMLXf1pBIを構築し、シロイヌナズナColumbia株にdipping法で形質転換を行った。薬剤選択した形質転換体(T1世代)の葉をエリサン1齢幼虫に食べさせたところ、シロイヌナズナ野生株に比べてMLXf1pBI株ではエリサンに対して弱い成長阻害活性が確認された。MLXf1pBI株に関し、mlx56遺伝子の弱い発現がRT-PCR法で確認されたが、MLX56特異的抗体を用いたWestern blotではMLX56タンパク質の発現は確認できずMLX56の発現量は低いと推察された。今後は新たな高発現体を作製してMLX56の作用・効果を検討する必要がある。クワ、ガジュマル他の植物乳液に比較的普遍的に存在するキチナーゼの昆虫に対する毒性メカニズムを、市販されているSerratia菌のキチナーゼを用いて検討した結果、キチナーゼの昆虫に対する毒性メカニズムが定説となっている昆虫消化管の囲食膜の破壊だけでは無いことを示す複数の証拠を得た。沖縄産野生イチジク属植物(Ficus)複数種で耐虫性を担う乳液成分を検討した結果、ホソバムクイヌビワ・ハマイヌビワ等、乳液中に高活性で存在するシステインプロテアーゼが耐虫性を担う場合と、オオバイヌビワのように乳液にはプロテアーゼ活性ないが、昆虫に対する毒性が強い場合があった。オオバイヌビワ乳液耐虫成分は疎水性塩基性画分に回収され、疎水性アルカロイドである可能性が示唆された。この結果はイチジク属を含むクワ科植物乳液は、耐虫性を担う点では共通するが、乳液中の耐虫成分はクワの耐虫タンパク質MLX56と糖類似アルカロイド、ハマイヌビワのシステインプロテアーゼ、オオバイヌビワの疎水性アルカロイドと近縁種(同属・同科)の間で極めて多様であることを示している。今後はオオバイヌビワ耐虫成分の完全同定を進める必要がある。
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Research Products
(10 results)