Research Abstract |
本研究では,農業など人為活動の介入の結果,本来自然生態系において必要不可欠なものであった「土壌生態系のホメオスタシス」が損なわれ,土壌酸性化,水系への栄養塩の流出,土地生産性/肥沃度の低下,砂漠化といった環境問題が現出してきた過程を実証的に検討・克服することを目的として,生態系の資源獲得プロセスを記述する速度論的元素動態モデルの構築を行う。平成21年度には,各調査地において気象・元素動態のモニタリングを行うとともに,以下の成果を得た。 1)湿潤条件下における鉱物風化プロセスのモデル化を目指した一連の研究を行った。今期はインドネシア・カメルーン国における調査を集中的に行い,前者における膨潤性2:1型鉱物の特徴を強く引き継いだ強酸性風化,および後者におけるカオリン化と塩基溶脱プロセスの詳細を検討した。 2)日本・インドネシア・タイの森林生態系において,プロトン収支法を各土壌層位へ適用した現地実験を行った結果,主に有機酸の解離,植物吸収による酸の生産・消費が各土壌層位において異なることが定量的に記述された。いずれにおいても主要な酸性化プロセスは植物の陽イオン過剰吸収であり,成長段階の森林では1mol炭素の樹体成長に伴い0.004-0.01mol_cの酸性化が進むことが示された。一方地質気候条件の違いによる土壌酸性度の違いが,有機酸の解離、植物吸収による酸の断面内での生産,消費を規定していることが明らかとなった。タイ・インドネシアにおける人為撹乱(森林の耕地化)は,土壌有機物の減耗に伴い,硝酸化成による酸生産,有機物の無機化による酸消費の増加を引き起こすことが示された。
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