2008 Fiscal Year Annual Research Report
全合成人工赤血球による循環障害の革新的治療法の研究
Project/Area Number |
20249072
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
川口 章 Tokai University, 医学部, 准教授 (30195052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加納 航冶 同志社大学, 工学部, 教授 (60038031)
根矢 三郎 千葉大学, 薬学部, 教授 (10156169)
山野 眞利子 大阪府立大学, 綜合リハビリテーション学部, 准教授 (80192409)
奥 直人 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10167322)
黒田 泰弘 東海大学, 糖鎖化学研究所, 特定研究員 (40398756)
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Keywords | ナノバイオ / 救命 / 薬理学 / 老化 / 酸素 |
Research Abstract |
報告本研究の成果が認められ、2008-2012年度スーパー特区「先端的循環系治療機器の開発と臨床応用、製品化に関する横断的・統合的研究」(橋本信夫代表)の一環として採用された。(1)-(11)は以下に掲載する今年度業績の番号に対応する。 目的ヘモグロビン(Hb)を基盤にした酸素運搬体(HBOC)、または全合成の人工酸素運搬体を用いて様々な疾患に対する治療法を探り適応拡大を目標に実験的に検討してきた((1)(11))。 内容最も研究の進んでいるリポゾーム封入ヘモグロビン(LEH)は、ラット中大脳動脈の永久閉塞モデル((3))においては脳の広い領域にわたって脳浮腫が抑制され、虚血後の再還流モデル((4))では梗塞域の有意な縮小となって現れた。すなわち虚血⇒脳浮腫⇒更なる循環不全⇒梗塞という悪循環の図式が想定され、それぞれの段階でLEHの有用性が推測された。酸素親和性の異なる2つのLEHを比較した実験((4))では、高酸素親和性LEHは低酸素親和性のものの1/5から1/25の用量で同等に有効であった。酸素親和性以外は同一のものであるから、脳虚血中の至適な酸素供給が主な作用機序と推測された。放射性同位元素を用いてラベルしたILEHの脳虚血モデルでの循環動態をPETを用いて経時的に観察したところ((5)(6))、梗塞域の外殻をなす皮質から虚血の中心の基底核に向けて次第にLEHが還流してゆくことが観察され作用機序が示唆された。欧米で臨床治入っている5つのHBOCsがことごとく危険であるとが報じられた。この原因は遊離Hbが血管外に漏出して-酸化窒素(NO)と結合するための副作用であるが、LEHではHbがリポゾームに封入されており、SNO-PEG-Hb((9))もNO供給体として作用するためこうした副作用はない。また動物では問題のなかった新規薬剤がヒトでの治験で初めて副作用が明らかになることもあるが、LEHはヒト型免疫マウスを用いた実験((7))で、マウスでもヒトでも受動免疫および能動免疫機能に大きな変化をもたらさないことが確認された。全合成酸素運搬体の合成も進んでおり、Hbとは異なった特性((8)(10))から、Hbとは異なった用法などを想定して製剤化と適応の拡大を進めている。 まとめ赤血球代替物としての需要を東海大病院および神奈川県赤十字血液センターで検討すると((2))、出血性ショックなどに危急の需要があることが判明した。しかし現在のHb生合成の能率を考慮すると、今後の選択肢として全合成の酸素運搬体、幹細胞などを用いたHb生合成、他動物のHbの利用も考慮することが必要と考えられた((1)(11))。
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