2009 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病細菌の病原プロテアーゼ・アドヘジンの膜輸送・分泌機構の全容解明
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20249073
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中山 浩次 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (80150473)
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Keywords | 歯周病 / Porphyromonas gingivalis / gingipain / タンパク分泌機構 / Flavobacterium johnsoniae / 滑走運動 |
Research Abstract |
Porphyromonas gingivalisは口腔、とくに歯周病患者の歯周局所から分離されるグラム陰性嫌気性細菌である。本菌はヘミン存在下で旺盛な増殖を示し、血液寒天培地上で発育すると菌体表面でのヘム誘導体の蓄積により特徴的な黒色集落を形成する。赤血球凝集能および血小板凝集能をもつ。本菌はエネルギー源として炭水化物を利用できず、もっぱら菌体表面および菌体外プロテアーゼでタンパクを分解し、ペプチドを摂取してエネルギー源とする。必然的に強力なプロテアーゼを産生・分泌するが、その大部分を占めるプロテアーゼがジンジパインである。ジンジパインはいろいろな生体タンパクを分解し、多彩な生物活性を誘導する。ジンジパインにはArg-gingipain(Rgp)とLys-gingipain(Kgp)の2種類があり、RgpはrgpA,とrgpBの2つの遺伝子、Kgpはkgp遺伝子にコードされる。rgpAとkgp遺伝子は3'側にアドヘジンドメインをコードしており、本菌の赤血球凝集能および血小板凝集能に寄与する。このようにジンジパイン遺伝子群のコードするタンパクの機能については多くの知見が得られている一方、これらのタンパクの菌体外への分泌機構はほとんど解明されていない。私たちはジンジパインの菌体外への分泌機構に異常を示す変異株を分離し、その変異遺伝子porTを同定した。P.gingivalisの遺伝子のもっとも類似性のあるhomologは近縁種であるBacteroides属菌に多く見つかるが、porT遺伝子についてはBacteroidesには存在せず、Phylum Bacteroidetes中の少し離れた菌種であるCytophaga hutchinsoniiやFlavobacterium johnsoniaeに見つかる。そこでP.gingivalisの遺伝子でC.hutchinsoniiにはhomologが存在するが、Bacteroides thetaiotaomicronにはないもの、55遺伝子(porTを含まない)を同定し、その内の46遺伝子の変異株を作製したところ、10遺伝子の変異株がジンジパインの輸送・分泌機構に異常を示した。そのなかにC.hutchinsoniiやF.johnsoniaeの滑走運動に関わる遺伝子群のhomologが含まれていた。F.johnsoniaeのporT homologの変異株を作製したところ、その変異株は滑走運動に異常を示した。同定されたジンジパイン分泌機構に関与するタンパクはいままでに報告のある分泌機構の構成タンパクとは類似性がなく、新規のタンパク分泌機構を構成するものと思われる。同様な分泌機構は他の歯周病細菌のTannerella forsythiaやPrevotella intermediaにも存在することがゲノム情報から明らかであり、P.gingivalisを始めこれらの歯周病細菌の制圧にこの新規のタンパク分泌機構を標的とする戦略が考えられる。
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