2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20255001
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
篠田 雅人 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (30211957)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 玲二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80315457)
坪 充 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (30432602)
伊藤 健彦 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教 (50403374)
|
Keywords | 干ばつ / 気候変動 / 草原生態系 / 乾燥地 / ユーラシア |
Research Abstract |
気候変動に関する政府間パネル第4次報告書によると、世界の陸地の約4割を占める乾燥地では、今後、干ばつが増加し、すでに困難に直面しているその水資源、農業生産、生態系が悪影響をこうむる可能性が高い。本研究では、ユーラシア草原において干ばつという外的強制力を受けて、乾燥状態が「土壌水分→植生→動物」と進んでゆく干ばつメモリの動態を解明し、干ばつという撹乱に対する生態系の感受性・復元力という視点からその持続性を評価することを目的とする。 モンゴル草原に位置するバヤンオンジュルにおいて、2005年夏に行った降雨遮断屋根を取り付けた人工干ばつ実験後の変化を長期にわたって継続観測した。干ばつ実験直後(2005年8月)には、地上部バイオマス、土壌水分などに顕著な減少が認められたが、地下部バイオマスにはみられなかった。2006年8月には、地上部バイオマスの急速な回復がみられたが、耐乾性が小さいイネ科草本の回復は、干ばつ実験以前(2004年)のレベルにまで降水量が回復した2008-2010年の3年目にみられた(2009年は欠測)。 さらに、室内実験により、水ストレス下でArtemisia adamsiiの揮発物質がStipa kryloviiの生育を促進させることで、その土壌水分を消費させ、最終的に生長力を低下させることが分かった。この結果、一度干ばつ・過放牧でA. adamsiiがはびこると、S. kryloviiが回復しにくいことが示唆された。 モンゴル草原の植生条件と野生動物モウコガゼルの行動圏面積の解析から、降水量が少ない地域では生育期の植物量は小さいにもかかわらず,植物量の季節変化や空間的不均一性も小さいため,モウコガゼルの年間行動圏面積が小さいことが示唆された。 カザフスタン草原では、春に積雪除去と秋に降水遮断の野外実験を実施した。地温と土壌水分は、積雪除去区で高温、乾燥の偏差(メモリー)を示し、120cm深程度までその影響が及んでいる様子が明らかとなった。また降雪の酸素・水素の安定同位体比測定によって、秋から冬にかけて同位体比の大きな季節変化を示すことが明らかとなり、水資源の起源解析に利用できる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モンゴル草原における干ばつ実験後の経過調査、カザフスタン草原における干ばつ実験などほぼ予定通り順調に進み、干ばつが野生動物の行動圏に及ぼす影響調査も着実に進みつつあるため。また、昨年度は研究のとりまとめの一環として、International Workshop on Drought Dynamics over an Arid, Cold Region in a Changing Climateを開催し、研究協力者らが研究成果を披露した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究期間の最終年となるため、各研究者の成果をとりまとめ、「干ばつメモリの動態」の全体像を示すため、研究集会を開いたり、学会のひとつのセッションで発表して、最終的には報告書を作成する。また、本研究が順調に進んでいることから、これを土台として新しいプロジェクトの立案を行う。
|
Research Products
(6 results)