Research Abstract |
現地調査:当初の計画で予定した中国西部は,四川省における大地震や民族運動の影響で調査が困難になった。そこで,ヨーロッパにおいてEphedra distachyaを調査することにし,ドイツのカッセル大学教授のフライターク博士らの協力により,スイス,イタリア,スペインなどを調査し,また別にイギリスの各植物園が保有するマオウ属植物株の入手に務めた。その結果,スイスのシオンで野生のE.distachyaを採取し,またイギリスの植物園ではE.distachyaの他,E. chilensis, E. equisetina, E. fragilis, E. scoparia, E. nebrodensisなどの貴重な資料を入手し,現在DNAを比較解析中である。 栽培研究:本学の薬用植物園における栽培研究で,従来E. sinicaの栽培品では低いとされてきたエフェドリン系アルカロイド含量が,ワグネルポットに川砂で植え付け,16分の1に薄めた人工海水を灌水することにより,日本薬局方で規定する0.7%を超えるアルカロイド含量を示すことを明らかにし,日本での本種栽培の道を開いた。また,入手できたE. chilensis, E. distachya, E. likiangensis, E. monospermaの種子を発芽させて,生株を得ることに成功し,今後の研究に備えることができた。 多様性に関する研究:これまでに中国,モンゴル,ロシアで蒐集したE.sinicaの資料を用い,産地による内部形態とアルカロイド含量の相違を検討した結果,両者とも生育地の水分環境の違いによって変化することが明らかになった。このことから,従来,遺伝的要因に左右されると考えられてきた内部形態や含有成分が,生育地の環境にも大きく影響を受けていることが明らかになり,本属植物の形態的分類や化学的分類を再考する必要性があることを示唆した。
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