2011 Fiscal Year Annual Research Report
世界の代表的高リスク集団におけるメタボリック症候群の予知・予防栄養学の開発研究
Project/Area Number |
20256001
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
家森 幸男 武庫川女子大学, 国際健康開発研究所, 教授 (80025600)
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Keywords | 栄養バイオマーカー / 24時間尿 / マグネシウム / カロテノイド / インド / スリランカ / スコットランド / 高血圧 |
Research Abstract |
栄養のバイオマーカー分析のため24時間尿を世界の61地域から集め、食事因子を分析した成果、食生活環境の急速な変化で疾患のリスクが増加しているアジア地域に注目し、インドネシア2地域、オーストラリアアボリジニ、さらに日系移住者のリスクが急増した食環境に住むブラジル白人の2地域の栄養とリスクの関係の分析に加え、今年度はアジアの国でも糖尿病などのリスクが急増しているインド1地域、スリランカ2地域の調査を実施した。南インド、チダンバラム市在住の30,40,50代の男女各30人、計180人を健診した結果血圧、肥満度は世界61地域の同年齢層より高く、収縮期/拡張期血圧、140/90mmHg以上と以下とで栄養マーカーを精査したところ、高血圧者ではマグネシウム(Mg)が有意に低く、菜食主義者におけるMgの摂取不足が高血圧のリスクとなる可能性を明らかにした。同じく菜食主義者が多いスリランカの都市、農村部でもそれぞれ180人を健診した結果、インドと比較し24時間尿のナトリウム(Na),Na/カリウム比は低く、血圧値が低い原因であると分かったが、Mgも低く、これが低い都市部若年層では農村地域に比べ肥満度や空腹時血糖値、脈拍は有意に高く、血圧も高めであり都市化により"メタボ"のリスクが上昇していた。大豆と魚介類の摂取マーカーであるイソフラボン、タウリンはアジアの長寿集団である日本人と比較して極めて低かった。今年度は更に倹約遺伝子をアジア系住民と異なり有していないとされる高リクス集団のスコットランドで血液カロテノイド(Ct)を分析し、日本人と比べて野菜摂取量が3分の1と低い集団で肥満や血圧などリスクの増加がCtの摂取不足と関係し、抗動脈硬化性に仂くHDLコレステロールは各Ctや総Ctと相関し、西ヨーロッパーの心筋梗塞の多発集団で動脈硬化性疾患のリスクとして野菜からのCtの摂取不足がクローズアップされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アフリカで生まれた人類の先祖が地球上に広がる過程で発祥地より遠くまで到達したオーストラリアのアボリジニ(1),インドネシア(2),スリランカ(2),インド(1)の6集団とこれらの集団のように倹約遺伝子の保有者とはみなされないブラジル白人(2),スコットランド(1)の3集団、合計9集団を対象に栄養のバイオマーカーと生活習慣病のリスクとの関係を分析した。当初計画では毎年1集団、計5地域の調査の予定であったが、過去25年に及ぶ国際共同研究の経験を生かし、予定以上に健診地域を広めることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画時点では遺伝子分析が可能であったが、その後次々に生物資源保護の立場から血液の国外での分析が不可能となった。しかし、24時間尿による栄養のバイオマーカーの分析により栄養因子が遺伝的背景の差を超える強い生活習慣病リスクの決定要因であることを証明し得た。そこで、これまで調査した集団の中で、一般には健康的とみなされる菜食主義にも拘わらずリスクが急増しているインド人を対象に、アジア人の食習慣でリスクの低減に寄与している事を証明してきた大豆の栄養成分による介入研究を実施し、地球上の広範な地域で収穫可能な大豆食による生活習慣病予防に貢献する。
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Research Products
(11 results)