Research Abstract |
本研究の目的は,音声の韻律的側面の知覚について人間が内的に行う処理を模擬した計算アルゴリズムを構築し,それを利用して第二言語習得を支援することである。より具体的には,リズムやテンポなどの時間構造と基本周波数の時間変化パターンを対象に、学習者の発話の良し悪しを客観的に評価するしくみを提供する。 平成20年度は,研究期間の初年度にあたるため,心理物理モデル,言語適応モデル,客観評価モデル,モデルの実証の4つのサブテーマを立ち上げるとともに,並行して先行プロジェクト(基盤研究A No.16200016,平成16-19年度)で得られた知識を発展させ,論文等として出版・定着させる作業にも注力した。主要な成果は以下のとおりであった。 タイ語母語話者の英語学習者音声を評価する目的で,英語音声合成用の音韻長制御モデルから出力される音韻長を参照する手法を試した。その結果,学習者の熟達度と相関する指標を導くことができるとの見通しを得た。これは,評価可能なテキストに制約を持たない自由度の高い技術の実現に資する。日本語母語話者の英語学習者音声については,時間的側面の音響特徴に基づく尺度で良し悪しを客観的に評価するスキームが既に提案されていた。今回,音響特徴による尺度に人の聴知覚特性から得られた重みを付加することで,エキスパートによる評価に有意に近づくことが分かった。聴知覚特性による重みは言語に依存しないため,適用可能な言語に制約を持たない技術の実現に資する。
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