Research Abstract |
1.大脳皮質第一次聴覚野(A1野)における生理学的測定による聴覚感性の源の探求 純音の振幅上昇時間と傾斜に対するA1細胞の反応を調べた.一過性反応細胞は短い伝導時間,低反応閾値,短い最適積分時間,短い最大反応立ち上がり時間を持ち,急傾斜に最大振幅の一過性反応を示した.一方,持続反応細胞は長い時間,緩い傾斜に,一定振幅反応から予測される持続反応を示した.反応時間特性の異なる細胞グループがA1に存在する. 2.A1野における生理学応答をもたらす聴覚末梢-中枢系の情報工学的モデル化 前年度に構築した聴覚末梢である内有毛細胞→1次聴神経の2ブロックモデルの後段に,本年度は中枢系として蝸牛神経核→下丘→内側膝状体→A1野の4ブロックを実装して,計6ブロックからなる機能モデルを構築した.中枢系の各ブロックは,前段における複数神経細胞からの出力パルス系列を荷重加算して入力とし,後シナプス電位を発生させたうえで確率モデルによって神経発火を生じさせるものである.構築したモデルにより,音の振幅変動に対するA1神経細胞における一過性応答の特徴である,最大発火率の変化および発火潜時の変化を表現することに成功した. 3.聴覚モデルに基づく聴覚診断システム・補聴システムの開発 (1)補聴システムに関して:補聴器の聞こえに対する使用者の評価について,明瞭度は語音弁別能検査,音質は感性評価語による検査とし,前年度の検討結果を参考にして検査条件を決定した.それに基づき,明瞭度の算出,異聴傾向の解析および感性評価を自動的に検査するシステムを開発した. (2)聴覚診断システムに関して:前年度に,音響的特徴を基に高周波的な狭窄音を複数に分類した.本年度は,それらをニューラルネットワークに入力し,正常音との違いを判断させることで,その分類が適切であることを確認した.
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