Research Abstract |
2009年度の研究目標は,(1)何種類かの外国語について映像音声非同期の閾値を測定することと,(2)外国人話し手による実験用標準映像を製作することであった。(1)については,日本語の他,米語,ロシア語,韓国語について,それぞれを母国語とするキャスターが話すニュース番組映像を,日本人参加者に視聴させ非同期閾値を測定し,ロシア語は画像が遅れても同時判断の確率が他の言語程低下せず,反対に音声遅れに対しては他の言語よりも少ない遅延量で同時判断の確率が低下した。(2)については,一般的日本人話し手と,コーカソイド的相貌を有する日本語を母国語とする話し手が,音声学的要因を統制した日本語文章を読み上げるビデオ素材を製作し,相貌が映像音声非同期知覚に与える影響を検討した。実験では唇部分を遮蔽した条件,唇以外の部分を遮蔽した条件なども含めて検討したが,相貌による非同期知覚への影響は顕著ではなかった。 今年度の後半から,映像音声非同期による主観的音量知覚の変化という現象について実験を開始した。これは当初計画には含まれない課題であり,実験中に偶然発見した現象であるが,個人差は大きいものの再現性が確認され,世界的にも研究例が見当たらないため,新たな研究課題に取り上げることにした。その結果,日本語では非同期時に知覚音量が低下し,特に映像が遅れると,それは顕著に現われるが,韓国語,米語,ロシア語では知覚音量に非同期の影響は生じなかった。そこで,(2)で作成した映像のうち,通常の日本語と,それを逆転再生したもの,無意味綴を話させたものを用いて,非同期時の知覚音量低下を測定したところ,逆転再生だけが,非同期の影響を受けなかった。
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