2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト心筋細胞の興奮収縮連関制御における機械的負荷の役割
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20300159
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
入部 玄太郎 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (90284885)
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Keywords | 機械刺激 / 興奮収縮連関 / SAKCAチャネル / 機械電気帰還現象 / 機械電気相互作用 / 心筋細胞モデル |
Research Abstract |
前年度までに、ヒトと共通したアミノ酸配列を持つ伸展感受性BK(SAKCA)チャネルが発現されることがわかっているトリ単離心筋細胞に比較的緩徐な伸展刺激を加えた場合、SAKCAチャネルは直接伸展刺激により活性化されるのではなく、伸展刺激により増加した細胞内カルシウムにより二次的に活性化されることがわかってきた。SAKCAチャネルに一次的な伸展感受性が観察されなかったのはこのチャネルの伸展感受性が進展速度依存性であるためか、もしくは進展速度のないBKチャネルであるためであると考えられるが、これを確認するためにランゲンドルフ潅流トリ心を用いた左心室壁伸展実験を行った。トリ心左室内にラテックスバルーンを挿入し、その内容量をコンピュータ制御のステップモーターにて急激に増減することにより左心室壁伸展パルスを与えることにより、伸展刺激誘発性の期外収縮を観察することができる。これは伸展感受性陽イオンチャネル(SAC)を介する陽イオンの細胞内流入による膜の脱分極によると考えられている。実際、SACの特異的な阻害薬であるGsMTx4の投与により伸展刺激誘発性期外収縮の発生率は有意に減少した。一方で、BKチャネルの特異的阻害薬であるIberiotoxin(IbTx)を投与したところ伸展刺激誘発性期外収縮の発生率は有意に増加した。このことからBKもしくはSAKCA電流が伸展刺激誘発性期外収縮の抑制に関与していることは確認された。さらに伸展感受性のないBKチャネルモデルを組み込んだ心筋細胞数理モデルと、進展速度依存の伸展感受性のあるSAKCAチャネルを組み込んだモデルでこの実験をコンピューター上でシミュレーションすると、SAKCAチャネルを組み込んだモデルでのみ実験結果を再現し、心筋細胞のBKチャネルはSAKCAチャネルであることが強く示唆された。これらの結果は、心臓震盪など、ヒトにおける機械刺激誘発性の不整脈の発生メカニズムにやその予防に関する知見へとつながるものと思われる。
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