2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20300201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 義春 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (60251427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郭 伸 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40160981)
吉内 一浩 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70313153)
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Keywords | 精神疾患 / 脳神経疾患 / 身体活動 / 行動変調 |
Research Abstract |
本研究は、行動の組織化(ヒトがいかに活動し休息しているか)に関する普遍統計則を切り口に、行動・運動異常をきたす精神・神経疾患を分類し、病態との関連からヒトの行動制御系について考察するとともに、同様の普遍統計則を持つモデル系の解析を通じて身体活動時系列の生成機序を明らかにしようとするものである。 本年度は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の縦断的な身体活動データと臨床情報との比較を行い、病態進行度の定量的評価可能な行動指標について検討した。結果、活動継続期間が発症期間の最も有用な共変量であり、発症経過に伴い指数関数的に減少することが分かった。 前年度までの知見から、行動統計則(γ、β)に基づく精神・神経疾患の分類を行った。γの低下は抑うつ気分を伴う気分障害(大うつ病性障害、季節性感情障害)に特異的であり、不安・緊張を主症状とする疾患(パニック障害、緊張性頭痛)や運動機能障害を伴う脳神経疾患(ALS、パーキンソン病:PA)では確認されないことから、気分障害は休息期間分布(γ)で評価可能であり、その変化は、抑うつ気分による行動変調(休息状態から活動状態への移行が生じ難いという側面)を反映していると考えられた。さらに、不安障害では不安・緊張の高まりに伴い、γが増加することから、γは不安障害の客観的評価にも有用であり、その変化は、不安や緊張に伴う落ち着きのなさ等の行動の変容(休息状態であっても容易に活動状態へと切り換わるという側面)を反映していると考えられた。一方、活動期間の変化は、神経疾患のみで確認されたことから(PAで増加、ALSで減少)、神経疾患における運動機能障害を定量化することに有用であると考えられた。 さらに、優先性待ち行列モデルに、生理学的欲求や要求等の重要度に基づく行動生起性という概念を導入し、気分障害および不安障害の行動変化を統一的に記述できる数理モデルを構築した。
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