2010 Fiscal Year Annual Research Report
和紙の物理的分別手法の確立と歴史学的データベース化の研究
Project/Area Number |
20300287
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保立 道久 東京大学, 史料編纂所, 教授 (70092327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久留島 典子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (70143534)
江前 敏晴 東京大学, 農性生命科学研究科, 准教授 (40203640)
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Keywords | 和紙 / 材質分析 / 文化財修復 / 古文書 / 柔細胞 / 繭紙 / 楮 / 繊維配向性 |
Research Abstract |
本研究の目的である歴史史料に使用された和紙の材質科学的な視点からの調査マニュアルとそれに対応した和紙材質記録システムを、歴史学研究者、自然系の製紙科学研究者、そして修復技術者(コンサヴェーター)の共同によって作成した。 具体的な成果として(1)純繊維紙、澱粉紙、柔細胞紙楮紙の三大分類基準を作成し、(2)分類の境界例に注意しつつ、上記分類の細分類の研究をふかめ、(3)対応する和紙繊維の顕微鏡典型画像を作成して、以上を和紙科研のホームページを構築して公開した。 とくに本年度において重要であったのは、楮の柔細胞が繊維間に膜を作る様相の調査・撮影に成功したことである。これによってHP掲載の画像と文書調査携帯用の100倍顕微鏡の目視画像を比較することが可能となった。純繊維紙、澱粉紙、柔細胞紙が顕微鏡ではどのように見えるか、楮紙分類の物理基準を提供しえたと考える(上記の顕微鏡画像には、王子製紙株式会社・研究開発本部、東雲研究センターの御協力をえて撮影したものもふくまれている)。なお、「文化財統合管理システム」のシステム内に集積した東大寺文書200点についての目録・各種写真・紙質データの整理がおわり、上記システムにもとづいて大徳寺その他においても文書料紙の調査を行って、データをふやした。また、繊維配向性分析にもとづく文書表裏の分析方法など関係の技法についても、学会誌掲載の形で情報を公開した。
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