2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本のソフトウェア産業の競争力規定要因の関係性に関する研究-経年比較と国際比較
Project/Area Number |
20310090
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
角埜 恭央 東京工科大学, メディア学部, 教授 (20376817)
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Keywords | 経営学 / 情報システム / ソフトウェア学 / 政策研究 / 統計数学 |
Research Abstract |
日本のソフトウェア産業におけるエンタプライズ系ソフトウェア・エンジニアリングの実践力を測定する尺度(SE度)、および経営力、経営環境の関係性分析を継続した。 経年比較については、基礎調査(2005~2007年度)に回答したIT企業151社を特定し、これらの企業の財務データ(1999~2008年度)を結合したデータ・ベースを作成して、SE度と経営力に関するパネル分析を行った。分析の結果、SE度を構成する要素の内、人材育成力、プロジェクト管理力、品質管理力が起点となり、顧客接点力、開発技術力、プロセス改善力、アウトプット力を向上させ、収益性や安定性といった経営力のレベルや成長に影響を与える因果構造が実証された。今後、メーカー系、ユーザー系、独立系の差異に関する詳細な分析など、競争環境に踏み込んだ研究が重要である。 国際比較については、米国IT業界の基本情報を収集すると共に、国際学会での発表・議論を通して、日本と他国の産業構造を比較分析する視点を整理した。これらの比較分析に基づき、簡易なエージェント・ベース・シミュレーションを用いて、日本のIT産業の構造に関する将来予測を行った。シミュレーションの結果、日本のITベンダーによる技術イノベーションへの適応力や価格設定、オフショア開発への取組みなどの要因が、日本のIT産業における多重下請構造に大きな影響を与える状況が再現された。今後、より詳細なモデルに基づく分析が求められる。 さらに、ITベンダー企業への社会調査に基づく本研究課題の結果および先行するITユーザー企業に関する実証研究結果に関して、産学関係者に示し議論を進めながら、今後の社会調査やシミュレーションにおける設計科学の可能性について提言した。
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