2008 Fiscal Year Annual Research Report
文化遺産としての大衆的イメージ -近代日本における視覚文化の美学美術史学的研究-
Project/Area Number |
20320020
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金田 千秋 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (80224624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 文和 同志社大学, 文学部, 教授 (30177810)
加藤 哲弘 関西学院大学, 文学部, 教授 (60152724)
島本 浣 京都精華大学, 美術学部, 教授 (30154280)
前川 修 神戸大学, 文学部, 准教授 (20300254)
石田 あゆう 桃山学院大学, 社会学部, 専任講師 (70411296)
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Keywords | 文化財 / 価値 / アーカイブ / コレクション / 神話 / 雑誌 / 文化財 / 評価 |
Research Abstract |
本研究の第一の目的は,従来ハイカルチャーに使われていた「文化遺産」の概念を,ローカルチャーに拡大適用する可能性を探ることであり、第二の課題はローカルチャーを文化財として保存するとき発生する諸問題を予め解明する点にある。前者の課題について、金田は文化「財」概念の根底にある「価値」の意識を、近世(17世紀)ヨーロッパの価値概念に遡ることで考察している。加藤と島本は、それぞれ文化財の保存が取る「アーカイブ」および「コレクション」形式について研究を進めている。また前川はベンヤミンの「写真小史」を使って、1920年代の写真イメージの背後に潜む「存在論」に考察を進めている。石田あゆうは、戦時下にあって日本の女性誌が「女性動員のための宣伝メディア」と「美的なイメージ」という互いに矛盾する二機能を同時に達成した事実に、大衆的イメージ固有の構造を見ようとしている。以上の「価値、評価、アーカイブ、コレクション、雑誌メディア」などから成る概念枠は、まだ統一には至ってないが、意見交換によって徐々に輪郭をなしつつある。第二の課題について述べる。本研究は「大衆的イメージに文化財概念を適用する」という前例の乏しい試みであるが、モデルを日本の大正時代前後にとって問題点を明確化する方針をとる。すなわち研究分担者及川は、近代日本における神話伝説的図像の研究により、神話が含む大衆化機能を明らかにする。岸は同志社大学蔵の「団扇下絵」(昭和10年代)の大衆性を、注文、生産、流通、受容、コンテキスト等のアスペクトで考察し、古書店リーチの所有する200点に及ぶ商業ポスターを分析するとともに、研究分担者山田と協力しつつ大正から昭和初期のコレクターの動向調査を推進している。以上の研究情報は科研メンバーの集まり、および対象イマジョリー学会との合同学会を通じて共有されている。
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Research Products
(14 results)