2011 Fiscal Year Annual Research Report
顕密・真宗聖教による中世仏教の統合的な教学構造と「仏法」観に関する研究
Project/Area Number |
20320107
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
永村 眞 日本女子大学, 文学部, 教授 (40107470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 雅子 日本女子大学, 文学部, 学術研究員 (20440084)
高山 有紀 新島学園短期大学, キャリアデザイン学科, 准教授 (40279568)
岡本 綾乃 神奈川県立金沢文庫, 研究員 (40443410)
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Keywords | 仏法観 / 宗乗 / 余乗 / 顕教聖教 / 密教聖教 / 史料データベース / 東大寺 / 醍醐寺 |
Research Abstract |
1調査の実施 東大寺図書館における三論・倶舎宗聖教の調査、醍醐寺における真言事相に関わる聖教の調査、神奈川県立金沢文庫における顕密聖教(華厳、真言密教)の調査、三重県鈴鹿市専照寺における真宗宗乗と余乗(法相、華厳、天台、律等)聖教の調査、愛媛県今治市大山祇神社における所蔵史料と境内絵図の調査を実施し、併せてデジタル画像の撮影を実施した。 2調査成果のDB化 調査の現場において作成した調書は逐次データ入力を行うとともに、構築された史料DBは研究活動にあたり有効に活用している。なお大山祇神社における調査史料は、処理システムを稼働することによりDBより直接に目録を編集し、文化庁美術学芸課と愛媛県に提供した。 3調査成果の検討 隔月に研究会(寺院史料研究会)を開催し、仏教史・建築史・美術史・芸能史等の各分野の視点から、調査のなかで新たに蒐集された史料について、新たな研究上の知見を報告した。特に東大寺図書館において調査した法相教学に関わる聖教(論義草)、専照寺における余乗の聖教を素材として、本研究事業の中核にある中世の寺院社会における「仏法」観のあり方について、具体的な検討がなされた。 4調査成果の公開 定期的な研究会とは別に、「新義真言宗と護国寺」(11月6日、シンポジウム「地域と文化財」)、「「束草集」と根来寺」(11月21日、巡礼記研究会)、「足利鑁阿寺と寺僧」(12月10日、東京芸術大学建築史シンポジウム)、「戒律の論義」(1月21日、戒律文化研究会)において、研究成果の一端を報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題に相応する史料群の調査とその成果の整理作業、さらに諸宗の枠を越えた教学構造をめぐる検討作業については一応の進展を見ている。ただし東大寺・醍醐寺の史料群は量的に膨大であるため、調査対象を限定せざるを得ない。特に本研究で重要な研究素材となる東大寺図書館架蔵の顕教聖教については、現在のところ法相・三論部が終了し倶舎部に着手しているが、内容的に豊かな華厳部に未着手であり、この点が当面の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、諸寺院に伝来している顕密聖教の調査という作業を前提において、その活用を通して宗派ごとに分化して研究されてきた仏教教学を横断する「仏法」観を検討するという課題を設定した。特に顕密聖教の調査と活用については、必ずしも重視されてこなかったため、現状としてはその調査と整理を踏まえた機能分類が不可欠であり、本研究では調査にあたり作成した調書のデータベース化とともに、聖教の機能論的な研究を重要な課題としている。そこでDB化・目録化を進めるべき東大寺・専照寺・金沢文庫等において、調査データの処理に遅れが見られ、最終年度にあたり研究成果のとりまとめと平行して、目録化の作業の進展に全力を投入することになる。
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Research Products
(4 results)