2010 Fiscal Year Annual Research Report
日独比較による日本の量刑実務の特性に関する理論研究
Project/Area Number |
20330013
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡上 雅美 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (00233304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松宮 孝明 立命館大学, 法務研究科, 教授 (80199851)
葛原 力三 関西大学, 法学部, 教授 (70234440)
城下 裕二 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90226332)
安田 拓人 京都大学, 法学研究科, 教授 (10293333)
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Keywords | 量刑 / 裁判員制度 / 刑事制裁 / ドイツ刑法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、今年5月より実施される裁判員制度の下で、量刑実務にも役立つ量刑論を発展・展開させることにあった。その方法論は、すでに素人裁判官が刑事裁判に関与する制度を取り入れているドイツ量刑法を参考にすることに重点を置いた。今年度は、(1)ドイツ量刑法の研究および(2)裁判員制度の下での量刑法の分析・検討を行った。 その成果の具体的な内容として、(1)に関連して、第1に、2009年度に行った日独量刑シンポジウムの内容を単行本として公刊した。第2に、ドイツ連邦通常裁判所判事執筆の『量刑の実務』を翻訳し、これも連載を開始した。(2)に関しては、刑事制裁・量刑研究会を定期的に開催し、量刑に関する実務家らの講演会を数度に渡り、開催した。その成果として、日本刑法学会関西部会にて、学会報告を行った。以上の研究成果の意義・重要性としては、長らく刑事裁判実務家の専権事項であるかのように考えられてきた量刑基準を、すでに獲得された刑法解釈学の知見を基にしつつ、量刑論を理論的に発展させ、学問的に裏付けられた量刑基準を提示することである。その前提的な作業として、現在の裁判員裁判における量刑事実論の特徴を分析した。とくに本研究により、従来の専門家による量刑よりも、裁判員裁判の量刑理由の記載は、非常に明確化され、量刑事実が限定的に列挙されていること、その中でも、量刑上重視すべきでない事情と重きをおかれるべき事情とがはっきりと選別されていることなどが新たな特徴として、指摘した。さらに、問題点としては、一般予防目的に対する過度の期待があるのではないか、重罰化傾向と執行猶予(とりわけ保護観察月執行猶予)の増加という、一見、両極端に思われる現象が起きていることなどが挙げられる。ここで、裁判員と共に量刑評議を行う職業裁判官の新たな役割とはどういうものかに関する提言を行った。
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