2011 Fiscal Year Annual Research Report
弱者包有的災害復興法学の考察--補償・居住福祉・地域再生との関係で
Project/Area Number |
20330019
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 邦彦 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00143347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 和男 神戸大学, 名誉教授 (60116241)
人見 剛 立教大学, 法務研究科, 教授 (30189790)
池田 恒男 龍谷大学, 法学部, 教授 (60092128)
今野 正規 関西大学, 法学部, 准教授 (10454589)
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Keywords | 災害復興 / 居住福祉 / 地域再生 / 補償 / リスク / 中山間地 / 放射能被害 / 転居支援 |
Research Abstract |
東日本大震災の災害復興に関する調査として第1に、岩手・宮城型津波被害については、釜石市・大槌町、石巻市、南三陸町・登米市を訪問した(2011年8月、12年3月)。そして、(i)高台移転の状況、その遅滞の背景、(2)住宅・産業(生業)補償の状況、(3)仮設住宅入居の仕方に絞り調査し、新潟中越地震以前の状況を確認した。第2に、福島型の放射能汚染型震災については、会津若松市での震災特別シンポに参加し、被災自治体の首長との有意義な意見交換を行い(2011年11月の地方自治学会)、同市に庁舎移転する大熊町の調査も行った。 他方で、「子どもたちを放射能汚染から守る福島ネットワーク」さらに札幌の転居支援NPO「むすびば」とも提携して、自主避難者への居住福祉支援にも注目し、自主避難者に対する抑圧状況は深刻だと考える。被災中山間地の地域再生それ自体は、居住福祉法学の大きな課題だが、他方で放射能による潜在型・蓄積型被害への危惧は、拮抗する要請であり、除染ばかりが前面に出て、その費用便益上の問題、転居関連の居住福祉予算の手薄さ故に、被災者の「自己決定」もできずに、土建工事型の予算に偏っており、大いに問題があろう。 本研究は平成23年度が最終年度であり、上記の調査結果は後続研究に繋げることとして、今年度は、まとめの作業に追われた。神戸震災以来、居住福祉的な災害復興の視角が欠落しているとの問題意識から、この10年間の震災・水害・竜巻被害などの実証研究を踏まえ、さらに、アメリカや中国などとの比較法研究も踏まえ、本科研のテーマである「災害弱者包有型の居住福祉的災害復興のビジョン」を提示し、現実の実務がそれとはほど遠く、今回の大震災により、その矛盾が赤裸々になっているのに、復興構想会議でも、こうした居住福祉法学的示唆が活かされていないことを実践的・問題提起的に指摘した。
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Research Products
(7 results)