2008 Fiscal Year Annual Research Report
国際的連関の視点から見るフィランスロピーの比較研究
Project/Area Number |
20330040
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
岡村 東洋光 Kyushu Sangyo University, 経済学部, 教授 (50108627)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 実 九州国際大学, 経済学部, 教授 (70216662)
金澤 周作 川村学園女子大学, 文学部, 准教授 (70337757)
石原 俊時 東京大学, 経済学研究科, 准教授 (70221760)
大杉 由香 大東文化大学, 環境創造学部, 准教授 (60297083)
中野 智世 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (90454470)
|
Keywords | フィランスロピー / 社会問題 / 社会福祉関係 / セーフティネット / 社会史(経済史) / 福祉の複合体 |
Research Abstract |
この共同研究のH20年度の成果の一つとして特筆すべきは、イギリスのチャリティ(フィランスロピ)に関するわが国における最初の体系的な研究である金澤周作著『チャリティとイギリス近代』(京都大学学術出版会)の出版である。 従来のイギリスの歴史記述において、チャリティ(フィランスロピ)が無視されてきたことに疑問を抱く金澤は、チャリティ(フィランスロピ)を「民間非営利の自発的な弱者救済行為」と定義し、社会福祉の歴史を、自助・互助・チャリティ・救貧法の織り交ざった図式において捉えた上で、チャリティ(フィランスロピ)の5類型による再構成により、その全体像を描き出し、一つの歴史像を提示することに成功している。 また、金澤は、旧来のチャリティ(フィランスロピ)研究に見られた、ミドルクラスと篤志協会の偏重、ならびに救済に値する者を選別し、合理的、専門的に救済するという方法の偏重傾向が歴史を通して変わらないチャリティ(フィランスロピ)の普遍性を歪めていると批判し、イギリスを普遍的な「慈善社会」として捉えてみせた。 富裕者から困窮者への富の移転の社会的な機能的把握、および歴史的な展開の論理が弱いという点を差し引いても、この書がわが国のチャリティ研究における画期的な成果であることは間違いない。われわれの共同研究から、この成果が生まれたことを誇りに感じている。
|