2010 Fiscal Year Annual Research Report
内部統制報告制度を支援する報告利益管理の兆候発見システムの構築
Project/Area Number |
20330096
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
國村 道雄 名城大学, 経営学部, 教授 (70089952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 靖 千葉商科大学, 会計ファイナンス研究科, 教授 (10383192)
田澤 宗裕 名城大学, 経営学部, 准教授 (80411487)
山形 武裕 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (80448464)
田代 樹彦 名城大学, 経営学部, 教授 (90268061)
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Keywords | 報告利益管理 / 発生項目 / 棚卸資産の実体的活動 / 異常値 / 会計的操作と実体的操作 / トヨタ生産システム |
Research Abstract |
本研究では、報告利益管理(Earnings management)を、発生項目(Accruals)を使った会計的操作に限定せず、企業活動を対象にした実体的操作にまで拡張した。実体的活動として運転資本の中核である棚卸資産を取り上げ、報告利益管理の存在を次ぎのとおり確認した。まず、棚卸資産の正常部分を売上高などから推定し、次に、棚卸資産の実績と正常部分との差を計測し異常値とし、最後に、この異常値がどのような要因で説明できるかを検証した。本研究ではRoychowdhury(2006)のモデルを拡張し2つの新しいモデルを定立した。主分析のモデルAはでは棚卸資産の正常部分をより論理的に推定するための新しい推計モデルを設計した。補完分析のモデルBでは、デフレータとして通常の期首資産でなく売上高を用い、斬新な分析を試みた。 まず基礎分析を実施し、経営者が小さな損失を回避する結果、損益ゼロ付近で利益分布にゆがみが生じていること、経営者の利益予想は当初楽観的であるが、予想の改訂で徐々に予測誤差が縮小していることなどを明らかにした。次に、主分析のモデルAでは、東証第一部上場企業を対象に分析し、低価法採用企業では損失回避のために評価損の過小見積りが行われていることを解明した。すなわち会計的操作が確認された。しかし、過剰生産が損失回避のために行われている証拠は得られなかった。このように損失回避企業での実体的操作は確認されなかったのは意外な結果であり今後の検討が期待される。最後に、補完分析のモデルBでは、わが国自動車産業を対象に分析し経営者予想の改訂が棚卸資産の異常値部分を有意に説明していることを析出した。なおモデルBでは、トヨタ生産システム(TPS)の存在が棚卸資産などを使った報告利益管理を抑制する効果を持つことを明らかにした。今後、他産業への拡張が期待される。
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