Research Abstract |
3年計画の初年度であった平成20年度は,研究を軌道に乗せる期間として位置づけ,以下の取り組みを行った。 まず,理論的枠組みの精緻化に取り組んだ。先行研究のレビューを行って理論的枠組みを丁寧に吟味し,チーム・コンピテンシーの概念を明確に定義するとともに,その育成と強化に影響を及ぼす変数ならびに,それがチームにもたらす影響について整理し,変数感の理論的関係性をモデル化した。本研究では,チーム・コンピテンシーの強化と衰退の時系列的変動を予測する数理学的なモデルの構築を目指しており,その基盤となる理論的枠組みを整えた。次に,組織現場における聞き取り調査を実施した。チーム・コンピテンシーの創発と育成・強化に重要な影響を与える変数,を実証的に明確にする活動の第一弾として,医療・看護および化学工場の組織現場に入り込み,チームによる業務遂行を日常的に行っている人々を対象にした聞き取り調査および質問紙調査を行った。その結果,リーダーシップおよびメンバー間の信頼関係そしてメンバー間のコミュニケーションにおけるユーモア等の変数の重要性が示唆された。また,実験パラダイムの構築に向けた取り組みを続けてきた。リアリティに富み,効果的な条件操作が可能な実験シナリオと手順を調整して整備することを目指して,この取り組みは継続している。これらの取り組みをより効果的なものとするために,チーム・コンピテンシー測定尺度の開発の準備作業を進めた。心理的な要素に加えて,行動面での指標を加味して,チームメンバーの回答に加えて,チーム活動を客観的に評価する側面も取り入れて,一般性の高い測定を実現する尺度開発に取り組んでいる。21年度は,これらの活動を基盤にして,調査および実験の実証研究に重心をおいた取り組みを推進する。(742字)
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