Research Abstract |
3年計画の2年目に当たる本年度は,研究の根幹をなす概念およびその測定方法の精緻化を行うとともに,環境変動状況のもとでのチーム・コンピテンシー強化を導く変数の同定を行った。実証活動は,システムエンジニアリング(SE)企業におけるプログラミング作業を行うチームならびに日常的にチーム看護を行う看護師チームを対象に推進した。SEチームについては,日立基礎研究所とのコラボレーションによって,勤務時間内のメンバー間のコミュニケーション行動を1分刻みで観察記録する装置を使用した測定が実現した。その測定に加え,チームワークをはじめとする職務満足感や動機づけなど諸心理変数の測定を行い,各チームのパフォーマンス(生産量および質=不良品発生数等)との関連性を検討した。結果は,コミュニケーションの多さは,必ずしも良好なチームワークやチーム・パフォーマンスにつながっているわけではなく,むしろ簡潔で的確なコミュニケーションこそが重要であることを示唆していた。コミュニケーション行動の量だけではなく,いかなる内容のコミュニケーションが交わされているのか,質的な検討を加味した実証活動が課題となっており,最終年度にさらなる検討を行う。看護師チームについては,チーム・コミュニケーションにおいてユーモアのある会話がどのくらいなされているかを測定し,メンバーの組織アイデンティティや動機づけ,そしてチームワークとの関連を検討した。失敗や予期せぬ苦境に直面したとき,看護師が職務動機づけとチームワークを維持するには,自らの存在価値を組織が認めているという実感の強さが重要な機能を果たすことを明らかにする結果が得られた。想定外の状況に陥っても,チームとしての動機づけやチームワークを失わず,早期に回復して目標達成を目指す"チーム・レジリエンス"を,チーム・コンピテンシーの中核要素として注目すべきことを示唆する結果を得た。(795字)
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