2010 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児における共感性・道徳性の発達:縦断的研究と神経倫理学的研究
Project/Area Number |
20330150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
板倉 昭二 京都大学, 文学研究科, 准教授 (50211735)
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Keywords | 共感行動 / 道徳的行動 / 同情 / 向社会的 / 発達神経倫理学 |
Research Abstract |
共感行動や道徳的行動など、いわゆる向社会的行動は、人が社会生活を円滑に営む上で極めて重要な能力となる。こうした、向社会的行動は、どのようなメカニズムで、またどのような経路で発達するのであろうか。本研究プロジェクトでは、共感行動や道徳的行動の萌芽を、行動発達とともに、その神経基盤も視野に入れた、「発達神経倫理学」研究を推進している。近年における先行研究では、極めて幼い乳児であっても、他者の行為に対する社会的評価を行う能力あることがわかっている。今年度は、予てから懸案であった、幾何学的図形のアニメーション刺激を用いて、10ヶ月児を対象に、他者への思いやりや同情に関する実験的研究を行った。まず、実験群の刺激として、2つの幾何学図形がコンピュータのスクリーン上を動き回る刺激を用意した。これは、一方の図形(例えば四角形)が他方の図形(例えば円形)を攻撃しているように見えるアニメーション刺激である。この刺激の統制として、同じ2つの図形が動くが、接触がない、すなわち、攻撃しているようには見えないアニメーション刺激を用意した。なお運動量などは両刺激で同じになるように統制した。その後、2つの幾何学図形の実物を呈示し、どちらに手を伸ばすか(リーチング)が記録された。その結果、実験群では、攻撃されているほうの物体に手を伸ばす乳児が有意に多かったのに対し、統制群では、どちらも同程度で有意差はなかった。本結果は、生後10ヶ月の乳児は、攻撃しているものと攻撃されているものでは、攻撃されている側を選択する傾向のあることが示された。少なくとも、乳児がこうした選好を示すということは、乳児の向社会行動の一端を示しているものと考えられる。なお、成人でも同様の検討を行った結果、物体の選択に関しては、個人差があり、一貫した傾向は見られなかった。
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