Research Abstract |
本研究の目的は,スポーツ・看護・芸能領域の伝承場面における「わざ」習得に効果的に作用する修辞的な言語(「わざ」言語)の分析を通して,わざが習得されるメカニズムを解明し,同時に,有効な指導言語モデルを構築することにある。今年度は,伝統芸能およびスポーツ領域における卓越したパフォーマンスに接する人々を対象とし,公開の研究会を3回開催した。具体的には,第3回「わざ言語」研究会において,歌舞伎領域の熟達者を招いた公開研究会を開催し,わざ言語を,関係性,身体性,日常性,行為性,表現性,の5つの視点から検討を行った。第4回「わざ言語」研究会では,創作和太鼓の指導者による講演および演奏者を交えた公開レッスンを通し,わざ言語が実際の指導場面で作用する様態について分析を行った。また第5回「わざ言語」研究会では,スポーツ領域の元エキスパート選手による講演および中高生との動作交流を行い,実際の動きの指導の中でわざ言語がどのように作用するのか,動画および静止画像を用いた動作映像を分析素材として活用しつつ検討を行った。これらの研究会の中では,卓越的技能の指導に際し,ひゆ的な指導言語としてのわざ言語が生起する文脈の分析も行われた。教え学ぶ場におけるわざ言語を対象とした本研究を通し,(1)ひゆ的な言語がわざの収得に作用するメカニズム解明,及び(2)スポーツ,看護,及び芸能領域の伝承現場で有効に作用するわざ言語モデルの構築,が進められた。本研究の成果としては,実際の指導現場におけるわざ言語の体系化が可能となり,新たな指導方法の提案がなされることが期待される。
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